Research Abstract |
本研究では,長周期波の特性を明らかにすべく,近年地震学や物理探査の分野で用いられている地震波干渉法を海洋の長周期波の場に適用するための理論をまず構築している.用いた基礎方程式は,source波源を含む連続式および運動方程式である.これらの方程式とGaussの定理を用いてRayleighの相反定理が得られ,source波源がランダムに分布したホワイトノイズ波源であれば,2地点で観測された長周期波の相互相関関数は,2地点間のGreen関数G(x_A,x_B,t)になることが示されている.また,ある地点で観測された長周期波に自己相関関数は,その地点にsource波源を置いた時の観測波形即ち「エコー」を示すことも理論的に示された.これらの理論的結果が正しいかを実証するために,新潟県直江津港の沖合いおよび港湾内の4地点において,2009年12月9日より1ヶ月間の長期波浪観測実施した. 波浪の現地観測により,長周期波の反射・伝播特性を明らかにし,以下の事柄が明らかとなった.(1)Source波源を含む連続式および運動方程式を用いて,2地点間の相互干渉項を空間積分することにより,2地点x_Aとx_Bとの相互相関関数がGreen関数に相当することが示された.(2)理論の妥当性を検証するために,直江津港内外の4地点において波浪観測を実施し,スペクトル,長周期波(30s~300s)の時系列および自己相関関数を算定した.その結果,50s以上の長周期波はほぼホワイトノイズ的な性質を有しており,自己相関関数もほぼδ関数に近い結果が得られた.(3)港湾内のP4地点では.自己相関関数から周期50sの共振が生じており,1月3日には周期130s程度の共振が発達している.このことは,長周期波の伝播時間が共振周期の半分であることから反射位置を同定できる.(4)P_1とP_2地点の長周期波の相互相関関数の約100s前後のピークは,長周期波がP_1からP_2に伝播するに要する時間であり,500s前後のピークは長周期波がP_1から汀線で反射し,P_2に達するまでの時間に相当する.(5)相互相関関数(Green関数)を用いて,P_2地点の長周期波の水位を予測した結果は,水位の変化はかなり類似しており,本手法は長周期波の波形を推定するのに有効な方法であることが確認された.
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