Research Abstract |
今年度も平成20年8月末豪雨をはじめとする幾つかの豪雨災害により,日本の各地で甚大な被害が生じた.このような水災に対しては,治水対策の構築・検証や住民の危機意識の涵養につながるハザードマップの作成・配布・活用が重要であり,その水理学的情報を与える氾濫解析は非常に重要なツールとなる.ただし,氾濫解析法は確立されているとは言えず,解析モデルの更なる精度向上と解析の簡便さの検討が熱望されている.そこで,本研究では,簡便であり,かつ高精度な解析を実施するために,格子内の地盤高特性を考慮した氾濫解析法について検討する. 本年度の予定では,「(1)氾濫解析における支配方程式(浅水方程式)の各項の寄与度の検討」と「(2)h-VA氾濫解析法の特性評価と適用範囲」の検討を挙げていた.特に,(2)について,降雨に伴う浸水現象の場合,本手法では若干浸水深が大きくなること,本手法では,移流項,粘性項を省略していることから,破堤箇所近傍では格子サイズの小さい従来モデルより解析精度は落ちるが,同じ格子サイズの従来モデルの結果よりは良い解析精度を有していることなどが示された.しかし,現段階において,これらの成果が十分にまとめられておらず,引き続き検討を続ける予定である. また,異なる格子サイズを有する2つの領域を結合させ氾濫解析を実施する,ネスティングモデルを構築し,その妥当性および有用性についても検討した. さらに,名古屋市の堀川流域を対象に下水道解析モデルの精度向上を検討し,氾濫域から下水道システムへの落ち込み流量の一つの表現を提示し,マンホール内の堰室の水理学的表現の重要性を指摘した.これらは,今後,h-VA氾濫解析モデルに下水道モデルを結合させる場合の有益な情報になるものである.
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