Research Abstract |
本研究は,富栄養化した海域において,粒度分布データが有する情報量を最大限に活用し,新たな底泥の分析手法の提案,底泥の輸送および分布範囲を推定する手法を検討することを目的とする.本年度は,本研究課題の最終年度であるので,本研究で提案された手法を用いて得られる情報の運河内の自然再生への活用について検討した 本手法は,有機物を除去した底泥に対してレーザ回折・散乱式粒度分布測定装置で得られた詳細な粒度分布データを,エントロピーを用いてグループ化した結果と,蛍光X線装置を用いて得られた化学組成を用いてグループ化した結果から,底泥の分布範囲を由来毎に示す方法である.この手法で用いる試料は数10gで十分であり,採泥労力は少なく,従来よりも空間的に高密度かつ多地点の採泥が可能になり,詳細な底泥の由来毎の分布範囲の特徴が判る様になった。一方,運河内における水質環境および生物生息場に関して調査した結果,運河内では富栄養化した海域特有の貧酸素水塊が形成され,その貧酸素水塊は水深2mまで達していることが判った,また,この様な水域では,生物生息場として,貧酸素水塊の影響が小さい水際に形成された砂溜まりの活用が重要であり,その砂溜まりは,運河内には多く存在するが,その空間スケールは数10-100mスケールの大きさで点在ことが判った.本手法は,このような比較的小さな空間スケールに対応できる手法であることから,水際の砂溜まりのような小スケールの地形を考慮した採泥地点を配置し,その底泥の輸送・分布特性を把握することで,沿岸域の生態系ネットワークを把握しながら,沿岸域の生物生息場の維持管理および自然再生計画を考慮することを提案した
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