Research Abstract |
本研究は,一般道と高速道路を対象に,広島地区で行われる公道実験データなどを用いて,多様なコンテクストに応じた,ITSを含めた安全施策の地区全体(エリアワイド)の効果分析を行い,得られた結果をもとにガイドラインの作成とワークショップを開催することでコンテクスト応答型警告(CRW)システムの推進体制づくりとプロセスを確立することを最終目的としている.本年度の成果を以下のようにまとめる. 1.過年度に広島市内で行った走行実験データを用いて,提供された車内警告情報が時間の経過とともに忘却されるという人間の記憶特性を組み入れた運転者の走行危険性モデルを開発した.開発したモデルは,従来のモデルと比べて説明力が向上すること,そして,情報提供の効果をより適切に評価できることが確認された. 2.NEXCO西日本(株)から提供を受けた交通事故統計データとIC区間別交通量データを用いて,高速道路におけるトリップ長をドライバーの疲労の代理指標として交通事故発生と損害程度のモデルをそれぞれ構築し,トリップ長が交通事故発生確率に影響を及ぼすものの,事故の損害程度に影響を及ぼさないことを明らかにした. 3.産官学の連携体制のもと,2009年2月9日から22日まで広島市内の国道2号を対象に,クレスト部に設置された路側情報板から前方車両の存在を知らせる情報の有無による運転挙動の変化の計測を目的に,さらに2月23日から3月1日まで山陽自動車道志和IC〜広島IC間を対象に速度超過警告情報の有無による運転挙動の違いの計測を目的とした走行実験を行った.従来のドライバーの運転挙動情報以外に,生体信号収録装置を被験者に装着してもらい,運転中の脳波,眼球運動,心電図,呼吸も計測した.走行危険性については,高速道路を対象に行った集計分析の結果,生体情報による評価が運転挙動のみからの評価と異なる傾向を示すこと,特に雨天時において危険度が高い区間特性を明らかにした.
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