Research Abstract |
鉄筋コンクリート構造物では,接合部の両側の梁に段差を設けることがある。しかしながら,梁・柱接合部を設計する際に用いられる鉄筋コンクリート構造物の接合部せん断強度式では,段差梁を有する場合の接合部終局強度を評価することができない。現在までに,段差梁を有する梁・柱接合部の力学的挙動に関する研究は数少なく,接合部耐力やせん断抵抗機構について,未だ解明されるに至っていない。 本研究では,左右の梁の芯ずれ量を変数とする試験体の加力実験を行い,接合部終局強度の評価方法の検討を行う。また,載荷方向で接合部ストラット抵抗機構が異なることが予想されることから,載荷方向による接合部破壊状況の特徴を把握し,接合部抵抗機構について考察する。 試験体は,左右の梁の芯ずれ量をパラメータとした4体である。芯ずれ量の無い試験体,梁の芯ずれを梁せいの0.25倍,0,5倍,1.0倍とした段差梁試験体である。芯ずれ量の無い試験体は接合部破壊型を想定した。梁芯ずれ量以外の鉄筋の種類,本数等は,全試験体共通である。 接合部破壊時の耐力は,左右の梁の芯ずれが大きくなるに従い上昇した。このことは,芯ずれ量によって変化する接合部内のシアースパン比による影響であると考えられ,接合部終局強度時の接合部水平せん断力との相関性が見られた。最大耐力が,負載荷時に正載荷時より数%大きい最大耐力となるのは,負載荷時には,接合部内に斜めひび割れが広い範囲にわたることから複数の圧縮ストラットが形成され,圧縮ストラットの応力度が小さくなることが要因と推測される。
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