Research Abstract |
本年度は,偏心の有無をパラメータとしたRC造柱梁接合部の破壊実験を実施した。本実験では,接合部パネルに生じるせん断ひび割れ等の損傷やパネルの変形状態を詳細に記録するために画像計測を併用しており,これらのデータを活用して柱梁接合部の損傷評価法について検討した。また,並行してRC構造物全体の耐震性能を評価する上で重要となる弾塑性ねじれの影響を考慮する手法についても検討しており,比較的簡便に弾塑性ねじれ変形を予測可能な手法を構築することができた。以下に,本年度の主な研究実績の概要を示す。 (1)RC造柱梁接合部の破壊実験の結果,偏心の有無により接合部パネルの破壊性状が大きく異なった。無偏心試験体では接合部パネルに生じた斜めひび割れが顕著であるのに対し,偏心試験体ではかぶりコンクリートの剥落が顕著であった。 (2)無偏心試験体では,既往の梁や柱の考え方に基づいて,接合部パネルのせん断ひび割れ幅から残余耐震性能を評価できることを確認した。なお,ひび割れ幅の評価に際しては,画像計測からひび割れ形状が楕円形に近いことを確認したため,ひび割れを楕円にモデル化してひび割れ幅を評価した。 (3)偏心試験体ではかぶりコンクリートの剥落が顕著となるため,剥落発生以後はひび割れ幅に基づく残余耐震性能の評価が困難となる。このことから,ひび割れや剥落が生じた接合部パネルの画像に対して,ボックスカウンティング法によるフラクタル次元解析を実施し,損傷の定量化が可能であるか検討した。その結果,剥落部とひび割れ部の面積比に応じて剥落部に重みづけをすることにより,フラクタル次元解析が適用でき,かぶりコンクリートの剥落を含めた接合部パネルの損傷評価が可能であることを確認した。 (4)脆性柱を含む1層1スパンの仮想RC骨組を対象として,FEM解析により弾塑性ねじれ挙動の傾向を確認したところ,ねじれの反転現象を捉えることができた。また,弾塑性ねじれによる付加変形を考慮した復元力特性の構築手法を確立し,弾塑性ねじれ挙動が耐震性能に与える影響について考察した。
|