2008 Fiscal Year Annual Research Report
古墳壁画の保存に関する研究 -周辺熱水分環境の影響とその対策-
Project/Area Number |
20560549
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小椋 大輔 Kyoto University, 工学研究科, 助教 (60283868)
|
Keywords | 古墳 / 保存科学 / 劣化 / 温湿度 / 熱水分同時移動 / 高松塚古墳 |
Research Abstract |
本研究では、古墳壁画の保存を目的として、高松塚古墳の石室の発掘後から、現地保存、そして解体前までに行われた保存対策や環境制御と環境条件の変化が石室内温湿度環境に与えた影響について明らかにすること、さらにこれらを元にした適切な保存対策や環境制御方法の提案を行うことを目的としている。 高松塚古墳石室内の温湿度変動の測定値や記録などを元に、墳丘、保存施設等を考慮した石室の温湿度解析モデルを用いて、それぞれの要因について条件を設定した。検討は、1)保存施設稼働から石室解体前までと、2)発掘から保存施設稼働までの二つの期間に対して行うこととした。1)については、石室内の温度上昇は、外気温より大きく、2001年以降のカビの大発生の要因と考えられることから、この要因の検討を行うことを第一の課題とした。得られた結果は以下の通り。 1)保存施設稼働後の約30年間の気象条件の変化は、この間の石室内の温度上昇の主たる要因の一つといえるが、それだけでは温度上昇を完全に説明することはできない。 2)石室内の温度上昇に影響を与える他の要因としては、(1)前室・準備室の温度制御、(2)保存施設の躯体熱移動、(3)機械室内の温度変動、(4)石室への入室、(5)墳丘の被覆状況が考えられる。 3)発掘前は、石室内温度の変動が小さく、石室内相対湿度は年間を通じて100%近くを維持し、石室内表面も同様であったと考えられる。発掘後に比して発掘前の石室内温度はカビ成長抑制に、湿度は剥離抑制に対して効果があったといえる。 4)発掘後に何も保存対策を講じなければ、夏期に、石室温度が約22℃まで上昇し、南側壁面とその近くの天井付近で湿度が90%を下回る程に乾燥する可能性があった。 5)発掘後の保存対策として、露出された石室に断湿及び覆土を行い、仮保護施設で覆うこと現地で石室内調査時以外に実施されたこれら対策は劣化の抑制に効果があったと考えられる。
|