2009 Fiscal Year Annual Research Report
古噴壁画の保存に関する研究 -周辺熱水分環境の影響とその対策-
Project/Area Number |
20560549
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小椋 大輔 Kyoto University, 工学研究科, 助教 (60283868)
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Keywords | 古墳 / 保存科学 / 劣化 / 温湿度 / 熱水分同時移動 / 高松塚古墳 |
Research Abstract |
本研究では、古墳壁画の保存を目的として、高松塚古墳の石室の発掘後から、現地保存、そして解体前までに行われた保存対策や環境制御と環境条件の変化が石室内温湿度環境に与えた影響について明らかにすること、さらにこれらを元にした適切な保存対策や環境制御方法の提案を行うことを目的としている。現地での測定値や記録などを元に、墳丘、保存施設等を考慮した石室の温湿度解析モデルを用いて、条件を設定し解析を行った。検討期間は、発掘から保存施設稼働までと、保存施設稼働後の二つの期間である。得られた結果は以下の通りである。 1)2004年末頃の石室内の温度上昇の要因の一つとして、2005年9月に、竹、木を伐採し防水シートを設置したことが影響している可能性が高い。しかしながら、保存施設稼働時の一年当たりの平均的な石室の温度上昇は、気象条件の影響や被覆条件の変化だけでは十分に説明することができない。 2)保存施設の温度制御用の吸放熱パネルへの送水温度測定値を用いた解析により得られた石室温度は、2002年から2004年を除いて測定値とかなり良く一致する。すなわち、保存施設稼働後の約30年間の石室温度の上昇は、この間の気象条件変化と送水温度の変化を考慮すると大略説明できる。しかし、2002年から2004年の石室温度の急激な上昇は、以上の解析でも十分に説明することはできない。 3)石室内点検作業等に伴い、石室内への人の出入りが多くなった時期(第一次修理~第三次修理、2001年以降)に石室温度が高く、カビの発生頻度も高いことを踏まえ、入室による温度上昇を検証すると、特に連続した入室があった後には、石室温度がやや高めに推移した。これも石室の高温化の要因の一つと考えられる。
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