2010 Fiscal Year Annual Research Report
古墳壁画の保存に関する研究 -周辺熱水分環境の影響とその対策-
Project/Area Number |
20560549
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小椋 大輔 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60283868)
|
Keywords | 古墳 / 保子科学 / 劣化 / 温湿度 / 熱水分同時移動 / 高松塚古墳 / 闘鶏山古墳 |
Research Abstract |
本研究では、古墳壁画の保存を目的として、高松塚古墳の石室の発掘後から、現地保存、そして解体前までに行われた保存対策や環境制御と環境条件の変化が石室内温湿度環境に与えた影響について明らかにしてきた。本研究のもう一つの大きな目的は、これらの結果を踏まえて、古墳の適切な保存対策や環境制御方法の提案を行うことである。まず高松塚古墳を対象に、発掘直後の応急保存対策として発掘部位への断熱材設置の効果について検討し、以下の結果を得た。1)発掘部位に設置すべき断熱材面積には適切な値があり、断熱材の熱抵抗が大きいほど壁画劣化の抑制に効果がある。2)熱容量の違いは壁画劣化抑制に与える影響が小さい。3)ここで対象としている高松塚古墳では、発掘部位の鉛直面と水平面方向にそれぞれ0.5m,1.0m程度、覆土と断熱材を拡張して設置するのが適当であり、乾燥の抑制に対しては10[m^2K/W]以上、結露蓄積の抑制には15[m^2K/W]以上の熱抵抗があればよい。さらに、現在、発掘調査を実施して副葬品等を取り上げる方法が検討されている闘鶏山古墳を対象に、古墳の石槨内部発掘調査時の適切な温湿度・空気質環境の制御方法について検討を行い、以下の結果を得た。1)断熱材を、発掘前の適切な設置時期(4月)、長さ(10m)で地表面に施し、発掘空間で空調を行い、その室を無断熱とすることで、石槨内の温湿度変動を抑え結露・乾燥を抑制できる。2)石槨内空気質予測モデルを提案し、それを用いた解析により、現状のO_2, CO_2変動を十分再現できることを示した。
|