2010 Fiscal Year Annual Research Report
居住特性からみた伝統的な街路・水路空間の変容過程に関する研究
Project/Area Number |
20560567
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
黒野 弘靖 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (80221951)
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Keywords | 住居 / 町並み / 共用 / 変容過程 / 雁木 / 柳川 / 並木道 / 水路 |
Research Abstract |
現在も維持されている日本の伝統的な街路や水路沿いの景観を、住まいと共用空間との間で利用と所有の関係が調整された結果もたらされたものと捉え、伝統的な景観が現在まで持続してきた住み手の側の論理を把握することを目的とした。居住特性には、当初の設定や居住者による働きかけが含まれるものとした。伝統的な共用空間として、新潟県上越市高田の「雁木通」、福岡県柳川市の「掘割水路」、東京都立川市・国分寺市の新田村「並木道」を対象とした。研究代表者が「雁木通」を、九州大学大学院・菊地成朋教授(連携研究者)が「堀割水路」を、東京理科大学・伊藤裕久教授(連携研究者)が「並木道」を担当した。共用空間に面する屋敷地(私有地)の用途の変化、共用空間に面する建物配置や開口や樹木の変化、変容過程の中で保持されてきた住居と共用空間の相補関係の三つの視点から比較分析した。その結果、高田の雁木通、柳川の掘割水路、武蔵野新田のケヤキ並木という伝統的な景観は、近世の計画当初からそのまま保たれてきたのではなく、居住者が代々住み続けるうちに、くらしの中で整えられてきたものであること。これらの街路や水路へ働きかける空間装置は、個々の敷地内においそ、生活の発展を追求してきた結果、整えられてきたこと。生活の発展の中でも計画設定は尊重され屋敷構えの形成に輪郭を与えてきたこと。共通する要件として以上を把握した。これらの伝統的な環境は、昭和40年代に上位の計画によって消滅の危機にさらされ、その直後に、景観という視覚的な快適性を強調した、行政による整備により保全されてきている。ただし、居住者までもが景観を第一目標にする場合、居住環境と上位の計画との齟齬は解消されず、雁木や水路や並木という共用空間を支えてきた住居の側からの意味づけが弱まる怖れのあることを指摘した。
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Research Products
(3 results)