2010 Fiscal Year Annual Research Report
児童養護施設の物理的環境と子供の発達に関する環境行動研究
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20560584
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
橘 弘志 実践女子大学, 生活科学部, 准教授 (70277797)
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Keywords | 少子高齢社会 / 児童養護施設 / 小舎制 / 個室 / 児童の発達過程 / 建築計画 / 生活の質 / 大舎制 |
Research Abstract |
本研究は、児童養護施設を対象にして、環境の果たす役割を見出し、建築計画論に結びつける知見を見出すことを目的とする。小舎制をとる児童養護施設を対象とし、子供の発達という視点から、施設の物理的・社会的・規範的環境と児童=人間とのトランザクショナルな関係を明らかにし、人間-環境システムの役割や意義を捉え、環境のあり方に対する知見を導出することを目指している。 本年度は最終年度にあたるため、昨年までに実施した全国アンケート調査の分析を進めている。ここでは、現在の施設整備の方向性を示す個室化・小舎化に対する期待や効果を尋ねている。その結果、個室化や小舎化によって子供の精神的な安定や児童同士の過剰刺激を避け、職員との個別の関係づくりに寄与することが大きく期待されている一方、コミュニケーションの増加や相互扶助の促進、自立力の増進などに対しては期待が大きくないという結果となった。これはある意味で、現状の施設ニーズを示しているとともに、子供を落ち着かせるという目先の課題に集中し、将来にわたる子供の成長・発達に対する視点が曖昧となっている現状をも示すものと思われる。 さらに、過去に行った小舎制施設の結果を相対化する上で、新たに2カ所の大舎制施設を対象として生活調査を行った。寝室、プレイルーム、食堂など、機能ごとに空間を割り当てた施設では、子供の生活も規格化され、生活単位としては大舎制でありながら、子供達の関わりは同年代に限られ、異年代との積極的な関わりは乏しい結果となった。大舎を小分けにして小規模なリビング+寝室のようなユニットを複数設けた施設では、ユニットごとに子供の生活に大きく差異が現れる結果となった。単に小規模化するだけでは、ユニット内の子供個人の性格がユニット全体の生活に強く反映されてしまうことが覗われる。形だけの小規模化では、新たな課題が生ずることが示唆された。
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Research Products
(1 results)