2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20560602
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
泉田 英雄 豊橋技術科学大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (70203057)
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Keywords | モスク建築 / イスラーム / ジャワ / 木造建築 / 木造構法 / 歴史的建築 / マタラム |
Research Abstract |
イスラーム伝来とともに、15世紀半ば、ヒンドゥ・マジャパイト王国勢力下にイスラーム小権力が続々と誕生した。この時代からオランダ植民地権力が全ジャワを支配するまでの18世紀末までに、各地に多くのモスクが建設された。本研究では、チレボン王朝とマタラム2王朝(スラカルタとジョクジャカルタ)を中心に、それらの庇護の下に建設され、現存するモスク建築の平面、構造、装飾などの特徴を明らかにすることを目的にする。33棟を調査対象とした。 イスラームは礼拝のための大室内空間を必要としたが、それはマジャパイト時代からのプンドポ(接客等用のホール)と呼ばれる木造建築の周囲に組積壁を巡らしてその用に当てた。屋根を柿葺きとすると雨仕舞いの関係から傾斜を急にしなければならず、室内空間が大きくなるとともに中央部が非常に高い建築となった。この大木造建築を地震から安全にするために、柱相互を貫で結び、さらに分厚い周壁にもたれさせるようにした。垂木は放射状に配置し、隅では柱の柄に差し込まれ、構造的な役割も果たしていた。 マジャパイト時代の建築を再利用したという伝説が残されているものがあり、確かにドゥマのアゴン・モスクの前のスランビ(拝殿部分)には他のモスクには見られない動植物の姿が彫られていた。また、ジョクジャカルタ王宮前の小モスクには中国寺院に見られる彫刻が施されていた。このように、ジャワのモスク建築には前代の木造建築の伝統を引き継ぎ、さらに18世紀に入り中国の木工技術を取り入れた形跡がある。 ジョクジャカルタ王朝下では、モスクをはじめとして大木造建築の屋根と周囲軒を構造的に分離し、両者を鉄棒で繋ぐ構法が開発された。一種の吊り構造であり、より耐震性を高めたものと考えられる。以上のように、インドネシアのジャワ島という気候と地震の条件下で、安定かつ快適な大室内空間を作り出すためのさまざまな工夫がされていることが判明した。
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