2009 Fiscal Year Annual Research Report
御手伝普請を通じた建築情報の地方伝播に関する研究-徳川家霊廟の地方寺社への影-
Project/Area Number |
20560603
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
伊東 龍一 Kumamoto University, 大学院・自然科学研究科, 教授 (80193530)
|
Keywords | 徳川家 / 霊廟 / 御手伝普請 / 地方 / 伝播 |
Research Abstract |
今年度は、まず、弘前市の岩木山神社本殿および革秀寺津軽為信廟および長勝寺の津軽家霊廟5棟の詳細調査を実施した。また、4代津軽信政を祀る正徳2年(1712)造営の高照神社本殿・中門・拝殿・幣殿・随神門を調査した.とくに高照神社は藩主を祀る神社として、その形式は直接東照宮の形式に倣ったという確証はないが連を引き続き考察するに値する対象である。 また、静岡県磐田市の文政5年(1822)造営の龍華院大猷院霊屋、および元和3年(1617)造宮の府八幡宮本殿・拝殿・楼門の調査および関連史料収集を行った.龍華院大猷院霊屋は,梁間三間桁行三間の宝形造で、軸部を黒漆塗とし、要所に彫物を配する建物である。現存する建物は文政期に造営されているが、前身建物の影響もあったものとみられる。同様の形式の霊廟が他地域にもみられるので、それらとの関連を調査し、地方の藩が徳川家の霊廟を造営する際の典型的な形式が見出せそうである。府八幡宮は、徳川家霊廟の原型を形造ることに貢献した幕府大工頭を輩出した地域の神社建築として、その装飾・構造の形式を確認した。 さらに、既に失われた霊廟建築として、旧高田藩の東照宮および大猷院御霊屋の建地割の分析をおこなった。建地割は本研究のために新たに購入したものである。東照宮・大猷院霊屋は、ともに新潟県旧高田藩の長恩寺にあったもので、松平忠直の菩提寺である。現在は、新潟県上越市の、寺名も改めた天崇寺がこれに相当するが、これまで、ほとんどその姿を明らかにする史料はなかった。建地割をみると、東照宮は入母屋造、正面千鳥破風付、向拝1間の建物で、全体に彫物などの装飾が多く、向拝柱や支輪部に地紋彫がみられる。一方、大猷院霊廟は、入母屋造、妻入、向拝1間付の建物で、東照宮に比べるとやや小型ではあるが、桁行6間の細長い平面をとる。装飾の形式は、東照宮に似て、地紋彫も使用する。現存する各地の東照宮建築の中でも、関東系の装飾形式をもつものとして、徳川家霊廟との関連を考慮する必要がある。
|