2010 Fiscal Year Annual Research Report
古代アテネのアクロポリスに建設された建築の設計法に関する研究
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20560610
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Research Institution | Miyakonojo National College of Technology |
Principal Investigator |
林田 義伸 都城工業高等専門学校, 建築学科, 教授 (00149999)
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Keywords | 古代アテネ / 設計法 / エレクテイオン / アテナ・ニケ神殿 / プロピライア / パルテノン神殿 / ヘファイステイオン / ヴィトゥルヴィウス |
Research Abstract |
1.昨年度末に実施した実測調査を踏まえて、エレクテイオンとアテナ・ニケ神殿の設計法に関する再分析を行った。その結果、エレクテイオンでは、本体建物・北ポーチ、南ポーチで同じ設計手順が用いられている箇所も多いが、エンタブラチュアの設計においては、南ポーチだけが異なっていることが判明した。一方、アテナ・ニケ神殿の設計法は、エレクテイオン本体や北ポーチと類似していることが確認できた。またパルテノンにおいてはケラの設計手順についても分析し、おおよその結論を導き出すことができた。 2.プロピライアは3つの建物がアクロポリスへ登る大階段をコの字に囲むように建設された複合建築である。設計の始まりは大階段の幅に関連する部分で、これを80尺と決め、柱間寸法を算出し、建物全体のレイアウトを決定している。中央建物は、柱間寸法との比例関係で平面設計がなされているが、南北建物では、柱間寸法から決定された基壇寸法から再度小さな柱間寸法が求められ、これを基準に設計されている。また、中央建物の内部設計では、心々間柱間寸法ではなく円柱の内法寸法で設計され、立面設計においては円柱下部直径が基準寸法となっていることが判明した。 3.ヘファイステイオンについても分析をし、上段クレピスが100尺として始まる設計過程を復元できた。なお、ここで使用された古代尺がエレクテイオンと全く同じ1尺=0.32510mとなった。 4.アクロポリス上の4神殿及びバッサエのアポロ神殿、エレクテイオンの設計手順について、一応の分析を行ったが、その分析精度には未だ検討の余地が残っている。一方、それらの設計法の比較検討も十分ではないが、イオニア式のエレクテイオンやアテナ・ニケ神殿の設計法の類似性、複合建築であるエレクテイオンとプロピライアの全体レイアウト決定法の類似性が確認できた。また、ヴィトゥルヴィウスの示す設計法との類似性も、それぞれの神殿の各所で見ることができた。
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