2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20560612
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 卓 The University of Tokyo, 物性研究所, 准教授 (70354214)
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Keywords | 磁性 / 準結晶 / 中性子散乱 |
Research Abstract |
H.21年度では前年度の研究で最も興味が持たれたAg-In-RE系を中心に単結晶育成を行った。その結果マクロ測定実験に耐えうる大きさの単結晶試料を得る事が出来た。それらの結晶は現在マクロ物性測定に供されている。一方、H.21年度後半は研究用原子炉JRR-3の停止期間が長く、中性子散乱実験に関しては限られた実験しか出来なかった為、むしろ、積極的にデータ解析を進めた。その結果、Ag-In-RE系におけるスピン凍結現象が、スピンの動的揺らぎの観点からは準結晶におけるそれと本質的に同じである事が明らかになった。一方、昨年度発見されていた(結晶場励起の無い)Zn-Mg-(Y,Gd)系の磁気励起スペクトルがE/Tスケーリングを満たす事も確認された。前者の結果は準結晶にかなり普遍的に見られるスピン凍結現象が局所クラスター構造に寄る物である事を示唆し、さらに、後者の結果は準結晶の磁気揺らぎが準周期系に特異な伝導電子による散乱を受けている事を示唆している。 一方で、H.21年度は関連物質群の研究も精力的に進めた。準結晶の磁性が局所クラスターに起因する物であるならば、より簡単な(対称性の低い)局所クラスターを含む磁性体と比較する事で、局所クラスターの対称性依存性を明確にする事が出来る。この観点から、Vの3角クラスターを含むV3分子磁性体の中性子散乱測定を行い、その磁気励起を完全に解明した。さらに、Ag-In-REやZn-Mg-(Y,Gd)系等、準結晶や関連結晶には常に化学的乱雑さが内在するが、これが磁性に与える影響を選択的に調べる為に、LiとFeが無秩序に正方格子上に配列するbeta"-LiFeO2の中性子散乱を行った。この結果、このような単純な系でも、Feの局所クラスター上に短距離相関が発達する事が分かった。
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