Research Abstract |
二価の金属六ホウ化物である(Ca_<1-x>Yb_x)B_6を中心に,作製条件等の違いによる熱電特性の変化を調べた.(Ca_<1-x>Yb_x)B_6は,Caの一部をイオン半径がほぼ等しいYbで置換した試料である.従来と同様に金属酸化物とホウ素より還元反応を利用して金属六ホウ化物粉末を作製し,その後,焼結法にてバルク状試料を作製した(以後,通常焼結試料).一部の試料については,一旦焼結した後に粉砕し,再び焼結を行った(以後,粉砕焼結試料と表記).これにより,同じ粉末原料を用いて作製条件の異なる試料を用意した. 焼結密度に関しては,通常焼結試料,粉砕焼結試料とも95%以上で同程度であった.一方,電気伝導率は粉砕焼結試料がおよそ一桁上昇し,ゼーベック係数は30%程度に減少した.これは,キャリア濃度が増加したことを意味しており,ホール係数測定から見積もったキャリア濃度も増加している.X線回折パターンから求めた格子定数は粉砕焼結試料で僅かに減少し,EPMAによる金属/ホウ素の組成分析ではホウ素の割合が減少していた.この結果は,粉砕焼結プロセスによりホウ素サイトに欠損が生じていることを示唆する.従って,ホウ素の欠損(格子欠陥)によりキャリアが生成されたものと考えられる.この欠損は,キャリアの移動度を僅かに低下させるものの,熱伝導率を低減するため,熱電変換材料としての性能が向上する可能性がある.最適キャリア濃度への制御,熱伝導率の低減など,金属六ホウ化物の熱電材料としての高性能化に対して,ホウ素サイトの格子欠陥の制御が有効な手法の一つである可能性が,今年度の研究により明らかになった.
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