2009 Fiscal Year Annual Research Report
水素吸放出サイクル時に導入される格子欠陥の解明と水素吸蔵合金の高寿命化への応用
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20560615
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
荒木 秀樹 大阪大学, 工学研究科, 教授 (20202749)
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Keywords | 陽電子消滅 / 水素吸蔵合金 / 格子欠陥 |
Research Abstract |
地球温暖化などの地球環境問題に対する解決策のひとつであるクリーンエネルギーとして水素の利用が注目されている。水素吸蔵合金は、水素の貯蔵・輸送装置、水素自動車用燃料タンク、蓄熱装置、ヒートポンプ、水素分離・精製装置、二次電池などへの応用が考えられており、クリーンエネルギーへの転換に欠かせない材料である。LaNi_5系合金は水素吸蔵合金として実用化されている合金であるが、水素吸蔵・放出を繰り返すことによって、吸蔵量が低下するなどの性能劣化が起こることが問題となっている。LaNi_5へのSnの添加は、この水素吸蔵・放出繰り返しによる性能劣化の抑制に効果があることが知られているが、そのメカニズムは不明である。本研究では、この原因を明らかにするため、Sn無添加LaNi_5合金とSn添加LaNi_<4.8>Sn_<0.2>合金の水素吸蔵・放出繰り返しによる劣化過程を、陽電子寿命測定を用いて調べることにした。一昨年度のLaNi_5に続き、昨年度から、LaNi_<4.8>Sn_<0.2>ついて実験を行っている。水素吸蔵は3MPaの水素圧力を負荷することによって、水素放出はロータリーポンプで真空排気することによって行い、いずれの処理も温度248Kにおいて行った。1~300サイクル後のLaNi_<4.8>Sn_<0.2>の水素吸蔵量を測定した。1サイクル時のLaNi_<4.8>Sn_<0.2>の水素吸蔵量はLaNi_5の水素吸蔵量のおよそ85%程度しかないが、水素吸蔵・放出サイクルを繰り返すと、LaNi_5の吸蔵量は著しく低下したのに対して、LaNi_<4.8>Sn_<0.2>の吸蔵量はほとんど変化しなかった。十数回の水素吸蔵・放出サイクルを繰り返した後の吸蔵量で比較すると、LaNi_<4.8>Sn_<0.2>の方がLaNi_5の吸蔵量より大きくなることが明らかになった。
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