2009 Fiscal Year Annual Research Report
金属窒化物結晶の照射損傷の特徴:構造空位と選択的はじき出し損傷効果の検証
Project/Area Number |
20560617
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
安田 和弘 Kyushu University, 工学研究院, 准教授 (80253491)
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Keywords | 原子力材料 / 核変換処理 / 照射損傷 / 照射欠陥 / 電子顕微鏡 / イオントラック / 窒化物結晶 / ZrN |
Research Abstract |
窒化ジルコニウムは,原子炉燃料および核変換処理母相の候補材料に挙げられているが,放射線照射により形成される照射欠陥の性状,形成・成長過程などに関する情報は不十分である.本研究では,電子励起ならびにはじき出し損傷を付与する放射線を照射したZrN結晶の照射欠陥集合体の形成・成長過程、ならびに安定性を透過電子顕微鏡法により調べ、照射誘起微細構造の特長を明らかにすることを目的としている.平成21年度に得られた主な結果を以下のとおりである. (1) 不純物濃度ならびに不定比性(N/Zr原子比)の異なるZrN原料粉末から,HIP法により焼結体を作製した.ZrN粉末にはC, Oなどの不純物が含まれており,ZrO2相が存在していた.焼結体を整形、研磨して作製した試料に210MeV Xeイオンあるいは2.4MeV Cuイオンを室温にて照射した.210 MeV Xeイオンの照射量は1.0×10^<16>~1.0×10^<19> ions/m^2であり,2.4MeV Cuイオンの照射量は1.0×10^<19>ions/m2とした.これらの試料から透過電子顕微鏡用薄膜試料を作製し,電顕観察に供した. (2) 210MeV Xeイオン照射により,31 keV/nmの高密度電子励起を付与した試料には,過不足焦点条件にてコントラストが反転するイオントラックに特有なコントラストを有する照射欠陥が観察された.しかしながらイオントラックの分布は極めて不均一であり,大部分の領域には形成されていなかった.EDXによる元素マッピングにより,ZrおよびN原子は試料に均一に分布していたのに対し,O原子はイオントラックが形成された領域にのみ偏って分布していた.すなわち,イオントラックはZrO_2相にのみ形成され,ZrNには形成されていない可能性が高いと考えている.以上の結果は,MgAl_2O_4, Al_2O_3, ZrO_2, CeO_2等の酸化物結晶とは大きく異なっている.不純物濃度の異なる試料を用いて研究を継続する予定である. (3) 2.4McV銅イオン照射により約1 dpaのはじき出し損傷を付与した試料には,試料全面にわたって5nm程度の転位ループと考えられるドット状のコントラストが高密度に形成された.
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