2008 Fiscal Year Annual Research Report
照射下微細組織変化予測のための点欠陥クラスタ安定性評価
Project/Area Number |
20560622
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
實川 資朗 Japan Atomic Energy Agency, 原子力基礎工学研究部門, 研究主席 (80354835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤井 友次 日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究主席 (80354827)
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Keywords | 金属物理 / 格子欠陥 / 照射損傷 / 中性子照射 / 原子炉材料 / 電子顕微鏡 / モデル化 / 原子力エネルギー |
Research Abstract |
高エネルギー中性子等の照射がもたらす、材料の硬化、脆化等の原因は、主に照射生成点欠陥の集合体(クラスタ)形成とその成長による微細組織の変化にある。この変化を計算機で予測する能力を向上させれば、多くの資源を要する原子炉での照射実験の軽減等が可能になる。本提案では、この計算機シミュレーションにおける最重要因子の一つである「点欠陥クラスタが点欠陥を吸収する力(クラスタの状態の影響を含む)」の推定を、イオン照射実験や計算機実験等で明らかにし、予測精度を高めた計算コードの構築を導く。 H20年度には、電子顕微鏡による照射下微細組織のその場観察、及びMD法によるクラスタと点欠陥に働く力等に関する計算機実験等を実施した。このうち、その場観察実験では、純金属に加えて、照射で著しい硬化を示す1-2%程度のNiやSiを含む鉄合金に、Feイオン照射(200KeV程度)や電子線照射を行い、Fe-Ni合金では、カスケード損傷が大きさ数nm程度の微細な点欠陥クラスタの形成を強く促進させること、しかし、この挙動は特異であって、他の多くの場合、カスケードがクラスタの生成を助長する範囲は、照射の初期段階に限られ、照射量の増加と伴に影響が減じることを明らかにした。この結果は、クラスタが点欠陥を吸収する力が、クラスタの大きさに従って増加することを示唆する。一方、計算機実験では、MD法に計算速度を高める工夫を加え、従来よりも大きい寸法範囲での点欠陥と点欠陥クラスタの結合エネルギーの計算に成功した。結果は、実験結果からの結論に沿ったものであり、これらをもとに、クラスタの1次元運動をも考慮した速度論コードを構築し、これまでのKMC法等による報告で、再現能力に根本的な問題があった「クラスタのサイズ分布」の予測能力向上に成功した。但し、計算可能な範囲が限られるため、さらに、改良を進める。
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