2010 Fiscal Year Annual Research Report
シリコン・チタン窒化物及び酸化物の不定比物性と機能化に関する研究
Project/Area Number |
20560623
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
粕壁 善隆 東北大学, 国際交流センター, 教授 (30194749)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須藤 彰三 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40171277)
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Keywords | 不定比化合物 / 窒化物 / 機能性材料 / イオン注入 / その場観察 / 透過電子顕微鏡 / 電子エネルギー損失分光 / 分子軌道計算 |
Research Abstract |
H20-21年度の研究成果を基にして、レーザービームを照射しながらシリコンおよびチタン薄膜表面を窒素ガス・アンモニアガスにより熱窒化する方法での窒化物薄膜の形成プロセスと比較検討するため、超高真空装置中で作製された膜厚100nmのTi薄膜に窒素イオン(62keVのN2+)を注入して、窒化チタン薄膜の形成過程をTEMやEELS法等でその場観察し、以下の知見を得た。室温でTiを蒸着した薄膜にはhcp-Tiの他にTiHxがhcp-Tiの局所的な原子配列と密接な関係を持って成長していた。TiHx結晶は350℃まで加熱するとその水素を脱離し、TiHxと密接な方位関係を持つhcp-Tiに変態することを見出した。また、250℃で蒸着したTi薄膜にはhcp-Tiのみが成長することも明らかにした。これらのhcp-Tiへの窒素注入による窒化では、hcp-Tiの中で広い空隙と相対的に低い電子密度をもつ八面体位置の、注入イオンによる占有を端緒としたTi副格子のhcp-fccエピタキシャル変態が、hcp-Ti格子の局所的な原子配列を引き継ぎながら、注入原子とチタン原子の強固な共有結合の形成と注入原子の存在によるチタン原子間の結合の弱まりによって誘起される。その際、面内の方向へのせん断変形を伴うことも見出した。窒化チタン薄膜内の窒素量は窒素注入過程の温度が高いほど窒素の脱離により低くなることを明らかにした。さらに、主にTiの3d電子からなる非占有軌道の状態密度が広がることで、窒化チタン薄膜の金属的特性が生じていることを分子軌道計算とEELSの結果の詳細な解析により見出した。これらの結果は、不定比化合物チタン窒化物(TiN)を次世代のデバイス作製に応用する際の重要な指針として、チタンと窒素の電子軌道の混成相互作用から生ずる電子状態の制御が挙げられることを示した重要な成果である。
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