2008 Fiscal Year Annual Research Report
熱力学測定、局所構造解析、量子化学的手法を駆使した高機能性酸化物の構造制御
Project/Area Number |
20560631
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
井手本 康 Tokyo University of Science, 理工学部・工業化学科, 教授 (20213027)
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Keywords | リチウムイオン電池 / 強誘電体 / 結晶構造 / 熱力学データ / 第一原理計算 / 電子構造 / 機能性酸化物 / 中性子 |
Research Abstract |
第1に、Liイオン電池正極材料として、Mn、Niの最適組成Li_xMn_<0.5>Ni_<0.5>O_2において試料を固相法、溶液法の異なる方法で合成し、さらに熱処理を行った試料において電池特性の評価を行った。また、化学的・電気化学的に脱リチウム処理をすることで充電時に相当する試料を作製した。これらを用いた検討の結果、固相法で作製した試料の方が高容量であることが分かり、両合成法共にLi組成の増加に伴いサイクル特性も向上した。各合成法でサイクル特性の良かった試料は、特に3aサイトカチオンミキシング量が小さく、特性の劣化に伴い両合成法ともに、3aサイトカチオンミキシング量は増加した。また、各合成法の試料の3b-6c間電子密度は、特にサイクル特性の良かった試料では増加した。さらに、固相法、溶液法共に熱力学的に安定な試料ほど、サイクル特性が良好であった。これらの結果より、本系においても構造安定性、熱力学的安定性と電池特性との間に密接な相関関係がみられた。第2に、FeRAM用強誘電体材料として、BiサイトにPrを置換させたBi_<4-x>Pr_xTi_3O_<12>(x=0.5,0.6)およびBi_4Si_3O_<12>を2.5,5mo1%添加したバルク体試料を合成し、物性と強誘電特性の組成、熱処理依存について検討した。その結果、Pr置換量がx=0.5,Bi_4Si_3O_<12>添加量5mo1%の試料において強誘電特性が特に向上し、800℃,O_2処理を行うことでさらなる強誘電特性の改善がみられた。これらについて結晶構造解析を行い、この分野では新しいアプローチである中性子全散乱により局所構造についてより厳密な解析ができることを示した。その結果、ペロブスカイト層の両端にあるTi-O_6八面体が歪み強誘電特性の向上に関与していた。さらに放射光、MEMにより求めた電子密度分布より、Pr置換およびBi_4Si_3O_<12>を添加することでTiと0の共有結合性が強くなることが分かった。これらの検討から強誘電特性の向上には、ペロブスカイト層の両端にあるTi-O_6八面体の歪みの増加と共有結合性が強くなることが関係していることを明らかにした。
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