Research Abstract |
第1に,Liイオン電池用正極材料は高容量化,長寿命化が要求されている。層状構造を持つLi(Ni, Co, M)O_2(M=Cu,Zn)について,合成条件・置換元素の違いによる電池特性の変化,中性子,放射光測定より平均・局所結晶構造,電子構造解析および熱力学的安定性の検討を行った。さらに,TOF中性子回折測定から充放電時の結晶構造変化および化学的脱Li処理した試料の熱力学的安定性の検討を行い,充電時の構造変化について検討した。その結果,固相法の試料は結晶構造の歪みが小さいこと,Li-O,(Ni, Co, M)-O間の結合性が大きいことが明らかになり,これらが放電容量維持率向上の一因であると考えられる。充電前後の正極についてex-situ中性子回折測定を行った結果,カチオンミキシングしたLiは充放電時に脱離しないこと,及び充電によりM-O_6八面体の歪みが増加していることが明らかになった。第2に,SrBi_2Ta_2O_9は高い疲労特性を有し,低電圧動作特性に優れており強誘電体メモリ材料として注目されている。本研究では新たにTaサイトをNbに置き換えたSrBi_2(Ta_<1-x>Nb_x)_2O_9,また,WとMoを置換したSrBi_2(Ta<1-x>Nb_x)_<1.95>M_<0.05>O_9(M=W, Mo)に注目し,Bサイトの組成変化による強誘電特性の変化を検討し,これらにBi_2SiO_5(BSO)を添加した試料を合成し,BSO添加が強誘電特性に与える影響についても検討した。さらに,置換による結晶・電子構造の変化を検討するために,中性子・放射光X線回折測定を行った。これらから,Nb置換,BSO添加によりペロブスカイト層中の八面体の体積が増加し,ペロブスカイト層への応力が増加し,格子歪みが増大したことを明らかにした。またペロブスカイト層での格子歪み,共有結合性の増加が強誘電特性向上に主に影響を及ぼしていることを明らかにした。
|