Research Abstract |
多結晶鋳塊から加工熱処理を経て作製されるNi_3(Si,Ti)金属間化合物冷間圧延箔は優れた強度特性を示すとともに,メタノール改質反応に対して高い触媒活性と水素選択性をも示すことが見いだされており,次世代の高強度耐熱材料としての使用とともに,構造体と触媒を一体化した水素製造用リアクター等への応用も期待されている.本課題では高温機械的特性および耐酸化性等のさらなる向上を追求するとともに,未解明である本金属間化合物における水素生成触媒能発現の機構解明を目的としている.前者に関して,Ni_3(Si,Ti)の構成元素は変えずに組成比をNi過剰組成にすることで加工性を損なうことなく,高温機械的特性の向上が図れることがわかった,また,基本組成合金に対して数種の第4元素を添加しても同様の高温機械的特性向上の効果が認められた.特に,ある種の元素を添加すると機械的特性のみならず,耐酸化特性や耐食性の向上にも効果的であることが観察され,本金属間化合物に対する合金化は特性改善に有効な手法であることが確認された.一方,後者の触媒能発現に関しては基本組成の圧延箔に対して,メタノール改質反応中の活性変化を詳細に調査した.本化合物箔は反応開始とともに触媒活性が自発的に増大するという通常の触媒とは異なる特異な現象を示すが,触媒活性の増大は単調ではなく,反応初期に小さなピークを示した後,反応時間の増加とともに大きく増加し,飽和値に達した後,微減するという複雑な変化を示すことが明らかとなった.反応中の箔表面を観察した結果,カーボンナノファイバに担持されたNi微粒子の形成が観察されるとともにSiO_2の生成も確認された.これらの結果から,箔の構成元素であるSiが反応中に選択酸化されることで箔表面にNi微粒子が形成され,このNi微粒子が触媒活性を担っていることが強く示唆された.
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