Research Abstract |
これまでにNi_3(Si, Ti)金属間化合物冷間圧延箔がメタノール分解反応に対して自発的触媒活性を示すことは確認されているが,本年度の実験により,汎用多結晶鋳塊をワイヤ放電加工機で切断したままの状態でもメタノール分解反応に対して高い触媒活性を示すことが確認された.冷間圧延箔の場合と同様,鋳塊サンプルの場合もメタノール分解反応後の合金表面にはカーボンナノファイバに担持したNi微粒子が観察され,このNi微粒子が触媒活性を担っているものと考えられる.また今回,新たにNi_3Si金属間化合物鋳塊サンプルについてもメタノール分解反応試験を行い,Ni_3(Si, Ti)と同様の高い触媒活性を示すことを見出した.次に,Ni_3(Si, Ti)およびNi_3Si鋳塊サンプルを用いてメタンの水蒸気改質反応実験を行った結果,両合金とも明瞭な触媒活性は生じなかったが,メタノール分解反応試験後のサンプルを用いてメタンの水蒸気改質試験を行うと,Ni_3Siについては900℃でメタンの転化率がほぼ100%の高活性を示した.これらNi_3(Si, Ti)やNi_3Siは,酸化物等のセラミックスに担持された現用の金属触媒とは異なり,安価にして熱伝導性に優れた新規の水素製造用触媒としての使用が期待される.一方,Ni_3(Si, Ti)の強度特性向上については,Ta元素がTiサイトに置換するとき約6at.%もの固溶範囲を示し,著しい固溶強化が生じることを見出し,それが原子寸法効果によることを明らかにした.また,B,CおよびN元素の単独および複合添加により結晶粒界破壊が抑制され,中間温度域の延性を向上させることに成功した.さらに,Ni_3Si相をマトリックスとしてNi_3Nb相とNi_3Ti相が第2相として分散するNi_3Si基マルチ・インターメタリックについて,塑性加工と高温強度をバランスさせた実用性の高い合金成分と組織を抽出することができた.
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