Research Abstract |
bcc構造を有する金属材料の摩擦にともなう結晶粒微細化機構を明らかにしていくために,種々のFe-20%Cr合金単結晶に対し摩擦試験を行い,その微視的構造を観察した.実験には表面方位が(001),(110)および(111)の直径30mmの円板型の試験片を用いた.摩擦方向に対して垂直となる位置で切断し,その断面をECC法,EBSD法により観察した.どの単結晶も,摩擦面直下に超微細粒組織,表面から深くなるにつれて,長粒状組織,転位セル組織がそれぞれ観察された.超微細粒組織や長粒状組織の厚さは(001),(110),(111)の順に大きくなり,摩擦による微細粒組織形成に結晶方位依存性が認められた。EBSD法で分析した摩擦にともなう結晶の回転角も,(001),(110),(111)の順に高かくなった. また,一方向すべり摩擦だけではなく複雑な摩擦履歴下で形成された微細組織を調査するために,銅単結晶試料に対して2方向からすべり摩擦試験を実施し,その下部組織を観察した.摩擦面方位が(100)の銅単結晶をpin-on-disc型摩擦試験機を用いて,二つのすべり摩擦方向が45゜および90゜で交わる摩擦試験を行った,摩擦表面最表層に形成される,等軸状の微細粒組識の厚さは,90゜交差では,第一回目のすべり摩擦を受ける領域という順で小さくなっていた.45゜と90゜交差では,第一回目のすべり摩擦のみが回転角に影響を及ぼす範囲が存在し,表面に近づくにつれて第二回目のすべり摩擦の効果が優先する範囲へと遷移した.つまり,二回目のすべり摩擦の影響深さは浅いことが分かった.90゜交差の場合が,銅表面に最も効率良く微細化を行うことができると判明した. また,Co/Cu多層膜コーティングした材料の摩擦では,通常のコバルトめっきに比べ,摩耗深さは1/5程度であることが分かった.
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