2008 Fiscal Year Annual Research Report
ナノセンシング技術による食品汚れの固体表面に対する吸脱着過程の解析
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20560699
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
萩原 知明 Tokyo University of Marine Science and Technology, 海洋科学部, 助教 (20293095)
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Keywords | 吸着 / 洗浄 / 水晶発振子マイクロバランス法 / QCM / β-ラクトグロブリン / ステンレス / 食品汚れ / 衛生管理 |
Research Abstract |
平成20年度は、食品汚れとして、乳製品製造装置に付着する汚れの主成分である□-ラクトグロブリンを、また汚れの吸着する固体表面として、食品製造装置の素材として頻用されているステンレスをそれぞれ用い、水溶液中の汚れの吸着量を、QCM装置で精密に測定するための検討を主に行った。これまでにQCM装置を用いて、固体表面への物質の吸着量を測定した研究例は数多く存在するが、実用上きわめて重要であるにもかかわらず、ステンレス表面に対する吸着測定をQCMで行った例はほとんど存在しない。というのも、多くのQCM装置ではステンレスをコーティングした水晶振動子は標準で用意されていないためである。それゆえステンレス表面に対する食品汚れの吸着に関する詳細な検討は遅れていた。そこで、今年度ではステンレス表面を有する水晶振動子を特注製作し、実際にQCM装置を用いて吸着挙動を精密に測定するための検討を行った。ステンレス表面に対する実測例が絶対的に少ない手探り状態の中で、表面の予備洗浄法、水晶振動子の固定方法、試料の添加方法など事細かな手順に至るまで、かなりの試行錯誤を費やしたが、最終的にはステンレス表面に対するβ-ラクトグロブリンの吸着量を、QCMで再現性よく高精度に測定する実験系の構築に成功した。また、吸着等温線はLangmuir型の式で近似できること、同一条件での吸着量がこれまでのdepletion法とほぼ一致するなど、旧来の吸着量測定法であるdepletion法と同等の測定結果が得られ、本年度構築した実験系の正当さが裏付けられ、次年度以降に吸脱着量の経時変化測定を行うための実験的基盤が固まったと考えられる。
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