Research Abstract |
昨年度,MFI型ゼオライト構造よりもBEA型ゼオライト構造がシクロヘキサノンの過酸化水素によるBaeyer-Villiger (BV)酸化反応に有効であること,B酸点が過酸化水素の活性化にルイス酸点あるいはシラノール水酸基がカルボニル基の活性化に寄与することを明らかにした。本年度は,BEA型ゼオライトのSi/Al比を制御し,B酸点の濃度を変化させることでの活性の変化および具なる構造,FAU型ゼオライト構造での過酸化水素によるBV酸化反応を試みた。 BEA型ゼオライトは,細孔構造が酸素12員環で構成されているが,MFI型ゼオライトでは,10員環であり大きさに違いがある。細孔径の影響をさらに検討するために,同じく酸素12員環の構造を有するFAU型ゼオライトを用いて反応を行った。同じ12員環の細孔をもっているが,FAU型ゼオライトは,BEA型ゼオライトに比べ活性が低く,単に細孔径の大きさが活性を決定していないことがわかった。BEA型ゼオライトのSi/Al比を制御して活性変化を調べたところ,低湖含有量の領域では,Al含有量のほぼ比例して生成物のε-カプロラクトンの収率が増加したが,Si/Al<50の高Al含有領域では,収率は増加せず,逆にAlの増加に伴い,収率がわずかに減少した。これは,Al含有量の増大に伴い,ゼオライトの親水性が高まり細孔内に多くの水分子が浸入し過酸化水素の活性加点であるB酸点を被毒するためだと考えられる。酸化剤である過酸化水素は,水溶液として供給されるため,水を反応系から排除することは極めて困難である。従って,より疎水性の高いBEA型ゼオライトを用いて反応を行うことが望ましい。そこで,疎水性の高いBEAゼオライトを用いて,酸化剤を一度に反応器に投入するのではなく,徐々に反応の進行に従って供給する,半回分操作を検討した。半回分操作を行うことで,回分操作(一度に酸化剤も加える操作法)に比べ,最終的な,ε-カプロラクトンの収率,選択率が向上し,かつ,過酸化水素の有効利用率も改善した。以上のように,過酸化水素水を酸化剤としたBV酸化反応において,BEA型ゼオライトで高Si/Al比のゼオライトを使い,半回分操作で運転することで,高いパフォーマンスが得られることが明らかとなった。
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