Research Abstract |
汎用性の高い規格鋼JIS SCr420H, SCM420Hに加え, 0.5%Si含有1.4%Cr-0.45%Mo鋼を用い, ガス浸炭後油焼入れ, ガス浸炭窒化後油焼入れ, そして真空浸炭後油焼入れならびにプラズマ高濃度浸炭後窒素ガス焼入れを実施した. 表面のミクロ組織の調査観点は, (1)固溶窒素濃度, (2)炭化物析出状態, (3)窒素マルテンサイト組織である. (1) 過飽和固溶窒素濃度の増加が焼戻し軟化抵抗の向上とマルテンサイト組織の微細化・強靭化に有効であることがすでに判明しているが, 真空浸炭炉ではこれまでの一般的条件では0.3%程度しか侵入しなかった. (2) 1.3〜1.6%程度の炭素を侵入させ合金炭化物をサブミクロンから数ミクロンに分散析出させることができた. 当初計画していなかったCVD-DLCをさらにコーティングし, ローラーピッチング試験を試みた結果, 従来のガス浸炭後油焼入れ材に比較し少なくとも8倍以上の高寿命となることが判明した. これは合金炭化物の微細分散析出による高温軟化抵抗の向上やDLC層の密着性/なじみ性の向上によるものと推察される. 詳細な組織解析は, 次年度継続実施する. (3) (1)と関連して, 0.4%以上の固溶窒素の確保を目標とした. そのためには, 炉内の減圧レベルやアンモニア流入パターンを適正化するとともに, 冷却能の高いガスを用い, 加圧レベル・流速を変化させ焼入れ冷却速度を適切に制御することが重要であることが分かった。 その他, 加圧ガスの流れ予測に必要な計算機シミュレーションは, カスタマイズしたソフトウエアFlowizardを用いて実施する予定であるが, 前記真空浸炭窒化後に段階的に冷却するステップクエンチ法を基本として現象の解明とともに更なる改善を図っていく. また, 実用化につながる基礎データを習得する目的で, マス効果の影響についても定量的に評価するため, 前記鋼種(即ち異なる焼入性)でサイズの異なる試験片を作成した. 次年度はこれらの試験片を用いて詳細な組織調査と, ローラーピッチング試験による疲労強度評価を行う予定である.
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