2009 Fiscal Year Annual Research Report
鉄鋼材料の真空浸炭窒化後加圧ガス冷却による表面組織制御
Project/Area Number |
20569003
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Research Institution | 仙台高等専門学校 |
Principal Investigator |
渡邊 陽一 仙台高等専門学校, マテリアル環境工学科, 教授 (60515154)
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Keywords | 真空浸炭窒化 / 窒素含有マルテンサイト / 窒化物 / ショットピーニング / 焼戻し軟化抵抗 / ピッチング / 残留オーステナイト |
Research Abstract |
0.5Si-1.4Cr-0.45Mo肌焼き鋼からなるφ26mmの円柱試験片を作成し、真空浸炭および真空浸炭窒化焼入れを行った。その際、表面の炭素量は0.8%、窒素濃度は、0.6%以上となるように制御した。焼入れ後、析出相の挙動への影響を調べる目的で、ショットピーニング処理した試料も準備した。これら表層部の詳細なミクロ組織解析を行った。その結果、窒素量は最大1.13%まで侵入しており、非常に微細な窒素含有マルテンサイトと微細分散した残留オーステナイトからなる地にCrNが析出した組織であることが判明した。さらに焼戻しによる組織を調べた結果、窒素固溶層は、焼戻し軟化抵抗が極めて高く特に300℃では硬化した。この現象は、実際の鋼部品、例えば自動車や建設機械の駆動部品(歯車など)の使用劣化に対する抵抗が高いをことを意味し、部品やユニットの小型軽量化の可能性を示唆している。この高濃度窒素固溶層は、焼入れ後のショットピーニング処理によってさらに焼戻し軟化抵抗が向上することも新たに分かった。これらの原因は、詳しいX線回折から、固溶窒素が、焼戻し過程で微細は窒化物(γ'-Fe_4N)として析出する析出硬化現象であることを解明した。比較として従来のガス浸炭窒化焼入れについても調べたが、ミクロ組織そのものに差異は確認できなかった。 このような優れた組織に、さらにPVD(UBMS方式)、CVD、イオンガン方式の各種DLC(Diamond-like Carbon)coatingを施し、実際の駆動部品(歯車)を模擬した二円筒式のすべりを伴った転がり疲労試験(RP試験)を行った。その結果、まず、真空浸炭窒化焼入れ試験片は、従来のガス浸炭焼入れしたクロム鋼の約2.6倍の寿命(ピッチング発生寿命)を示した。DLCコーティングした試料は、全て寿命がさらに向上することが確認できた。DLC膜とその下地層の夫々の役割についての解明は今後の課題である。
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