2010 Fiscal Year Annual Research Report
鉄鋼材料の真空浸炭窒化後加圧ガス冷却による表面組織制御
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20569003
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Research Institution | 仙台高等専門学校 |
Principal Investigator |
渡邊 陽一 仙台高等専門学校, マテリアル環境工学科, 教授 (60515154)
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Keywords | 真空浸炭窒化 / ガス冷却 / 熱伝達率 / 熱処理シミュレーション / ダイヤモンドライクカーボン(DLC) / ピッティング / 摩擦係数 |
Research Abstract |
φ10mmの円柱試験片を用い真空浸炭窒化後850~900℃に再加熱して,窒素ガス冷却の実験を実施した.その際,ガス圧を10MPa~30MPaに,ガス流速を10~30m/sに変化させ,熱伝達率に及ぼすガス圧ならびにガス流速の影響を調べた.表面下約0.5mmに埋め込んだシース熱電対から冷却速度を実測しこのデータを基に逆解析手法を用いて熱伝達率と温度の関係を算出した.断面の組織を光顕,XRDにより,また硬さ分布を詳細に調べる一方,熱処理プロセスシミュレーションDEFORM-HT2Dを用いて数値シミュレーションを実施し,実験結果との対比で考察した.十分な窒素固溶マルテンサイトや油焼入れなみの組織硬さを形成するには20MPa以上必要であることも分かった.このような浸炭窒化マルテンサイト組織を下地としてリニア-イオンソース(LIS)-ダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜の複合処理を行い,最大4.5GPaまでの面圧疲れ強さをピッティング発生寿命から評価した.その結果,(1)真空浸炭窒化処理は,従来のガス浸炭焼入れに対し,ピッティング発生寿命が著しく向上する.その効果は窒素量が多いほど大きく,窒素量0.55%で,面圧4.0GPaの場合50倍以上の高寿命となる.(2)真空浸炭窒化後LIS-DLC被膜によって,面圧4.2GPaでは寿命が約6倍に,5×10^5回の時間強度で見れば面圧が約7%向上する.(3)LIS-DLC膜は,一気に剥離するのではなく,徐々に摩耗ないし剥離が進行し,下地層から亀裂が発生してピッティングに至るものと思われる.(4)LIS-DLC被膜によって,油潤滑下の摩擦係数が0.135から0.112へ約17%軽減する.このことが接触面での発熱・軟化を抑制しその結果としてピッティング寿命が向上したものと思われる.(5)真空浸炭窒化処理後DLC成膜の複合処理によって,これまでに実現できなかった4.0GPaを超える超高面圧・高速摺動部材への応用が期待できる.
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