2008 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白質の立体構造を考慮したアミノ酸置換と自然選択圧の関係の解明
Project/Area Number |
20570008
|
Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
鈴木 善幸 National Institute of Genetics, 生命情報・DDBJ研究センター, 助教 (70353430)
|
Keywords | 進化 / 蛋白質 / 立体構造 / アミノ酸置換 / 自然選択 |
Research Abstract |
蛋白質をコードする塩基配列において、アミノ酸を変化させない塩基置換(同義置換)の速度とアミノ酸を変化させる塩基置換(非同義置換)の速度を比較することにより、アミノ酸配列レベルに働く自然選択圧を検出することができるが、新しい自然選択圧検出法として、系統樹上で時間の幅としてウインドウを開き、ウインドウ内で生じた同義置換数と非同義置換数を比較することによって、自然選択圧の時間的変化や一時的に働いた自然選択圧を検出できる方法(系統樹ウインドウ解析法)を考案した。この方法を用いてC型肝炎ウイルスの感染個体内からサンプリングされた時系列配列データを解析することにより、ウイルスの中和抗原領域には正の自然選択圧が断続的に働くことを示した。 H3N2亜型のインフルエンザA型ウイルスは、熱帯地域では通年流行が観察されるが、そこでは抗原性の進化は断続的に起こり、免疫逃避もそれに伴って生じていると考えられてきた。そこで、ウイルスの系統樹において熱帯地域で進化していると考えられる枝だけを取り出し、さらに抗原性の変化が起きたと考えられる枝と起きなかったと考えられる枝に分類して、それぞれの枝において自然選択圧の検出を行ったところ、両方の枝において正の自然選択圧が検出された。このことから、ウイルスは抗原性が変化していないと考えられていた枝でも、常に抗原性を変化させて宿主の免疫から逃避し続けていることが示唆された。 系統樹中の特定の枝において、いくつかのアミノ酸座位に働いた正の自然選択圧を検出する方法として最近頻繁に用いられているbranch-site testについて、コンピューター・シミュレーションならびに実際の配列解析から、この方法が理論的に正の自然選択圧を検出し得ない位少ない塩基置換しか起こっていない場合でも正の自然選択圧を検出し得ること、またそれがある特定の性質を持つコドン対の出現と高い相関を示すことが示された。
|