2010 Fiscal Year Annual Research Report
2つのコンデンシンの染色体分布を規定するメカニズム
Project/Area Number |
20570009
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小野 教夫 独立行政法人理化学研究所, 平野染色体ダイナミクス研究室, 専任研究員 (20291172)
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Keywords | コンデンシンI / コンデンシンII / G-バンド / 姉妹染色分体交換 / DNA損傷 / DNA複製 / コヒーシン |
Research Abstract |
コンデンシンIとIIは、染色体の凝縮と分離に中心的な役割を果たしているタンパク質複合体である。これらの複合体は、分裂中期染色体で姉妹染色分体の軸上に局在するが、互いに異なる分布パターンを示す。そこで本研究では、2つのコンデンシン複合体の染色体構築における役割の違いを理解することを目指し、これらの染色体分布を規定する要因を明らかにすることを目指した。これまでの研究で、コンデンシンIIは分裂期染色体のG-バンド領域に集中する傾向が分かっている。この染色体領域はS期の遅い時期に複製される領域である。そこで本年度は、コンデンシンIIの染色体分布はDNA複製と関連しているのではないかという作業仮説を立てて、その検証を進めた。その結果、コンデンシンIIが染色体凝縮以前のS期の段階ですでに染色体への結合を開始していることが分かった。この結合量は、弱い複製の撹乱によって増加した。この時、コンデンシンIとIIの染色体上での局在は重複する傾向が見られた。しかし、DNA損傷部位とコンデンシンIIの染色体局在に関連はみられず、コンデンシンIIの除去しても複製は阻害されず、DNA損傷や姉妹染色分体交換は増加しなかった。ところが、複製を弱く撹乱した細胞からコンデンシンIIを除去すると、単独の処理では見られない分裂期染色体の形態異常が引き起こされた。さらに、S期におけるコンデンシンIIの染色体結合は姉妹染色分体の接着に働くコヒーシンの動態にも影響を受けることが分かった。これらの結果から、コンデンシンIIはDNA複製やDNAの損傷・修復には関与していないが、複製された染色体に結合して、適切に分割・凝縮しうる構造へS期の間に変換する役割をもつことを示唆する。コンデンシンIIの染色体分布が分裂期だけでなくS期での役割を反映している可能性は、本研究で初めて示された。
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Research Products
(6 results)