2010 Fiscal Year Annual Research Report
湖沼沿岸生態系食物網の解析的研究:浮遊系食物連鎖と底生系食物連鎖の連結
Project/Area Number |
20570013
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊地 永祐 東北大学, 東北アジア研究センター, 名誉教授 (00004482)
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Keywords | 食物網 / 沿岸帯 / 湖沼 / 安定同位体解析 / 浮遊系食物連鎖 / 底生系食物連鎖 / 餌資源解析 / 群集動態 |
Research Abstract |
沿岸帯では浮遊系食物連鎖と大型植物や底生微糸軸藻類が基点となる底生系の食物連鎖が混合して存在する。本研究の目的は、水深が浅い宮城県伊豆沼を沿岸食物網のモデル調査地として、炭素・窒素安定同位体比解析によって、その食物網の全容をとらえ、沿岸帯の浮遊系と底生系食物連鎖の関係を調べることにある。本年度は底生系食物網の内、生産者と低次消費者の食物関係について解析した。伊豆沼の大型底生動物としてはユスリカ類と二枚貝のカラスガイが優占する。ユスリカ類のうち、アカムシユスリカは水中から堆積したPOMを主に同化していたが、モンユスリカ属の1種とオオユスリカは、炭素同位体比が低いことから、メタン由来の有機物を同化している。これらのユスリカ類の巣穴の構造を観察すると、オオユスリカとモンユスリカは内壁に酸化層をもつU字形の巣穴をもつことから、巣穴壁で増殖したメタン酸化細菌を食べていることが推察された。水圏生態系では、食物連鎖の基点となる生産者の同位体比が時期的にも場所的にも大きく変化するので、食物連鎖の同位体比の基点値の推定に生産者の代わりに長寿命の1次消費者が、とくに湖沼の浮遊系食物連鎖研究においては、懸濁物食の底生2枚貝類が使われることが多い。伊豆沼で大型のカラスガイの同位体比を測定したところ、餌となる懸濁物からは予想できないほど高い窒素同位体比が得られた。そこで、稚貝から大型個体まで体サイズの異なるカラスガイの採集を行い、また、籠にいれて湖底で飼育した個体を用いて、カラスガイの成長に伴う同位体比の変化を調べた結果、カラスガイの窒素同位体比が成長に伴い増加することが分かった。
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Research Products
(6 results)