2008 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の社会行動を統御する分子遺伝学的,生理学的,生態学的機構
Project/Area Number |
20570016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柴尾 晴信 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 助教 (90401207)
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Keywords | 社会性昆虫 / 分子遺伝学 / 組織形態学 / 神経生理学 / 化学生態学 |
Research Abstract |
本研究は、社会性昆虫類のコロニーにおける強調と制御の仕組みを理解することを目的とする。社会性アブラムシをモデル系として、とくに化学コミュニケーションに着目して、アブラムシの兵隊階級による分業や社会行動の統御メカニズムを明らかにするために、分子生物学的、化学生態学的・神経生理学的研究をおこなった。社会性アブラムシは、繁殖に専念する生殖階級と利他的な社会行動をおこなう兵隊階級の二つの階級から構成される社会性昆虫である。兵隊は若いうちは掃除をおこない、年を取るともっぱら攻撃に専念するという齢差分業を示す。本年度は、社会性アブラムシにおける齢差分業の調節に関与する候補遺伝子の探索をおこなった。遺伝子の候補として、foraging遺伝子に着目した。foragingがコードする、PKGの活性を上昇させるcGMPのアナログを若齢兵隊に経ロ投与した結果、攻撃性を示す個体の割合が増加した。このことから、アブラムシの兵隊における齢差分業に、foraging遺伝子が関わっていることが強く示唆された。そこで、foraging遺伝子のクローニングをおこない、まだ予備的な段階ではあるものの、兵隊アブラムシ体内における遺伝子の発現量の定量化にも成功した。このように、齢差分業の成立メカニズムに対して遺伝子レベルからのアプローチをおこなうことで、社会性の成立・維持機構や社会性獲得の進化過程を理解する上できわめて重要な結果を得ることができた。
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