2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20570019
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山平 寿智 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (20322589)
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Keywords | 性淘汰 / 緯度 / 性的二型 / 種分化 / クライン / 種多様性 / 共通環境実験 / メダカ |
Research Abstract |
多くの分類群において,その種多様性は赤道付近で最も高く,北と南へ緯度が増すにつれて低下するというパターンが見られる.メダカ属魚類(Oryzias)も,その多くは熱帯に分布している.これら熱帯のメダカの特徴は,オスの派手な色彩や装飾的な鰭の形態にある.この性的二型の緯度クラインは,低緯度における強い性淘汰圧を反映していると考えられるが,二次性徴の強い発現には他の適応度形質への投資量の減少が伴うことが理論的に予測される.本研究では,南北に側所的に分布する2種のメダカ:メダカO.latipes(温帯種)およびハイナンメダカO.latipes(熱帯種)を対象に,二次性徴の発現(=成熟)スケジュールと体サイズの増加(=成長)スケジュールを比較してその検証を行った.野外から採集されたメダカ(鹿児島県出水)とハイナンメダカ(ベトナム・ハノイ)を実験室に持ち帰り,得られた稚魚を共通の環境条件(26℃, 14L:10D)のもとで飼育して尻鰭と背鰭の伸長と成長のプロセスを追跡したところ,ハイナンメダカのオスの方が鰭の伸長が始まるタイミングが体サイズに比して早い傾向にあることがわかった.これは,熱帯種の方が成熟が早いことを示す.しかし,ハイナンメダカのオスは成長が遅い傾向にあることもわかった.これらの結果は,熱帯の強い性淘汰による顕著な二次性徴の進化には,成長への投資量の減少が伴ったことを示唆している,低緯度における強い性淘汰は種分化を促進し,ゆえに熱帯の高い種多様性の創出に貢献しているかもしれない.
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