2008 Fiscal Year Annual Research Report
魚類における保護者の性の決定因に関する研究ー行動の潜在能力と制御機構からの検証
Project/Area Number |
20570022
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
坂井 陽一 Hiroshima University, 大学院・生物圏科学研究科, 准教授 (70309946)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
国吉 久人 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 講師 (60335643)
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Keywords | 保育行動 / 性的役割 / 硬骨魚類 / スズメダイ科 / カワスズメ科 |
Research Abstract |
硬骨魚類における子育て(保育行動)は片親および両親で担当されるが、総じて雄が関わることが多い。この保護者の性の決まり方については、フィールドでの現象データの蓄積が進められ議論が進められてきたが、その発現・制御に関するミクロメカニズムについての情報が乏しい。そこで本研究では「(1)潜在能力の視点から保護者の性を再整理し」、「(2)保育行動の発現・制御因子を明確にする」ことを目的とし、初年度となる本年度は、スズメダイ科とシクリッド科を材料に(1)の実験を中心的に実施した。 本実験では、片親が保育を担う魚種のうち、雌雄が同居、あるいは近接して暮らすものを被験魚として選定した。これは、保育を担当する性の消失などに対して、他方の性がその事態を認識する機会が確保される条件が揃う生物でなければ、保育行動の潜在性が維持・機能されると考えにくいという予測からである。系統的に近縁にありながら保育を担当する性が対照的なスズメダイ科とカワスズメ科を材料とし、前者はDascyllusとChrysipteraの2属、後者はApistogrammaとNeolamprologusの2属にそれぞれ対象を絞り込み、雌雄ペアでの繁殖飼育をスズメダイ4種、シクリッド3種について実施した。これらのうち繁殖が安定した間隔でみられたフタスジリュウキュウスズメダイとA.trifasciataについて現在までに保護個体の除去実験を実施し、保育行動の潜在性に関するデータを獲得した。 保育を通常担当しない性の個体によって直ちに保育の役割交代がスムースに行われた例はなく、通常発現する本能行動がどのような過程を経て治まるかが潜在的な保育行動の解発の有無に深く関わることを行動観察によりつかんだ。これは今後のミクロメカニズムの探索における大きな手がかりとなるものである。
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