2009 Fiscal Year Annual Research Report
魚類における保護者の性の決定因に関する研究-行動の潜在能力と制御機構からの検証
Project/Area Number |
20570022
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
坂井 陽一 Hiroshima University, 大学院・生物圏科学研究科, 准教授 (70309946)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
国吉 久人 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 講師 (60335643)
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Keywords | 保育行動 / 性的役割の可変性 / Dascyllus属 / スズメダイ科 / 神経ペプチド / 硬骨魚類 |
Research Abstract |
1) 産卵後に繁殖ペアからオスのみを取り除き、メスの保育行動の潜在能力を探る実験を、雄単独保護タイプのスズメダイ科Dascyllus属フタスジリュウキュウスズメダイ(以下フタスジとする)に魚種を絞って集中的に実施し、メス単独で卵をふ化まで保育しうることを確認した。メス保護を経た卵のふ化率は、親魚のない状態の卵よりも有意に高いものであった。野外ではメス単独による卵保護が発現せざるを得ないような状況が生じることがなく、メスに潜在する保育能力の存在はまったく知られていなかった。但し、オスの保育による卵ふ化率はメスの保育よりも有意に高く、性転換後に二次的に発現する行動型が卵のふ化率をより高める上で重要であることが示唆された。 さまざまな研究者からの情報収集を狙いとして、日本動物行動学会において本実験結果について発表を行った。あわせて、学会において連携研究者である桑村哲生中京大学教授との研究打ち合わせを行った。 2) 上記実験からフタスジがモデル生物として適していることが判明したため、保育行動のミクロメカニズムに関与する脳内の神経ペプチド類の探索を進めるベースとなる分子生物学分析として、有力な候補物質の1つであるプロラクチン(PRL)の単離と塩基配列の解析を実施した。フタスジのPRLは337塩基、112アミノ酸から成り、スズメダイ科と比較的近縁にあるカワスズメ科と類似した配列であることが判明した。これは本種のPRLの特殊性が保育行動の可変性に関与している可能性を棄却するものである。本年度の研究で設計したPRL-1プライマーは、脳下垂体のmRNA量の定量化を可能にするものであり、これを用いて1)の実験における保育行動の発現との関連を探る実験アプローチを実施予定である。
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