2008 Fiscal Year Annual Research Report
生物集団の歴史性が生活史進化に及ぼす影響:系統関係に基づく地理的変異の評価
Project/Area Number |
20570024
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
石原 道博 Osaka Prefecture University, 理学系研究科, 講師 (40315966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 孝司 大阪府立大学, 産学官連携機構, 教授 (80182301)
北出 理 茨城大学, 理学部, 准教授 (80302321)
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Keywords | 表現型可塑性 / 体サイズ / 緯度クライン / 地理的変異 / 季節多型 / 系統的制約 / 遺伝的変異 / キアゲハ |
Research Abstract |
集団の分化と遺伝的浮動など過去に起こった「歴史的・中立的」な出来事は、集団内の遺伝的変異の大きさに影響を与え、その後の自然選択による進化の方向や速度に影響を及ぼすと考えられる。そこで本研究では、生物の生活史形質に見られる地理的変異の進化に、その生物種の集団の分化過程とこれにともなう遺伝的浮動が制約としてどの程度の影響を及ぼしているかを、地理的分布が広いキアゲハを用いて調べた。まず、キアゲハの生活史形質に地理的変異が見られるかを明らかにするために、日本各地での野外観察および博物館に所蔵されている標本の観察を行った。その観察結果は、キアゲハの体サイズに夏型では緯度クラインが存在するのに対して、春型では存在しないことを明らかにした。そこで、このような季節型間で緯度クラインに違いをもたらす原因を明らかにするために、高緯度の稚内個体群と低緯度の京都個体群を用いて、日長を2処理(長日と短日)と温度を2処理(高温と低温)で組み合わせた計4処理の恒温恒日条件で、それぞれの個体群を飼育して体サイズの変化を観察した。その結果、体サイズに見られる日長と温度に対する表現型可塑性の程度に遺伝的な違いに基づく個体群間変異があることが明らかとなった。特に温度に対する可塑性の程度が個体群間で異なることが、春型と夏型に見られる地理的変異パターンの違いをもたらしていることが示唆された。しかし、ミトコンドリアDNAを用いた集団間の系統解析もまた北海道と本州で遺伝的構成が大きく異なることを示したため、体サイズの可塑性に見られる個体群間の遺伝的な違いが集団の分化過程とこれにともなう遺伝的浮動にどの程度影響されているかまではわからなかった。そのため、さらに緯度が異なる個体群を増やして飼育実験を行う必要があることが次年度の課題として確認された。
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Research Products
(2 results)