2008 Fiscal Year Annual Research Report
高等植物におけるカルジオリピンの機能に関する分子生物学的解析
Project/Area Number |
20570031
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
和田 元 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60167202)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水澤 直樹 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教 (80342856)
|
Keywords | カルジオリピン / 高等植物 / 脂質 / シロイヌナズナ / 生体膜 / 膜脂質 / ミトコンドリア |
Research Abstract |
カルジオリピン(CL)は、4分子の脂肪酸を結合したユニークな構造をもつリン脂質であり、真核生物ではミトコンドリア膜に局在している。この脂質は生体内ではマイナスの電荷をもった分子として存在し、その電荷によってタンパク質などの分子と相互作用することで、他の脂質にはない特別な機能をもつと考えられている。申請者らは、シロイヌナズナからCL合成酵素遺伝子(CLS)を同定することに成功し、この遺伝子が破壊されたタグラインを用いてCLの機能について解析している。本年度は、CLを特異的に含む膜から構成されるミトコンドリアの形態に注目してCLの機能を解析した。CLSは胚や維管束、気孔孔辺細胞、主根のコルメラ細胞などの組織で高発現しているが、それらの組織では特殊な形態したミトコンドリアが高密度で観察される。野生株と変異株のそれらの組織においてYFPによりミトコンドリアを可視化して観察したところ、変異株では巨大化したミトコンドリアやくびれを持って長くなったミトコンドリアが多く観察された。電子顕微鏡でも、発達したクリステ様構造をもった巨大なミトコンドリアが確認された。蛍光タンパク質Mit-Kaedeを用いてミトコンドリアの融合頻度を測定したところ、変異株のミトコンドリアはほとんど融合を行っていないことがわかった。このことから、CLはミトコンドリアの融合を制御することでミトコンドリアの形態に重要な役割を果たすと推測された。また、植物ミトコンドリアの分裂には、DRP3AやELM1などが関わっていることが知られている。これらのタンパク質のミトコンドリアへ輸送を調べたところ、変異株ではミトコンドリアへの輸送がおこらないことが明らかとなった。このことは、ミトコンドリアの分裂に関わる因子の輸送も異常となっており、それもミトコンドリアの巨大化がおこる原因の1つであることを示している。
|