2009 Fiscal Year Annual Research Report
光・熱ストレス下での光化学系II D1タンパク質凝集の分子機構の解明
Project/Area Number |
20570039
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山本 泰 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 教授 (40091251)
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Keywords | 光化学系II / 光ストレス / 品質管理 / D1タンパク質 / 活性酸素 / チラコイド膜 / 光合成 / ホウレンソウ |
Research Abstract |
本研究では、光合成の光化学系IIの品質管理に関連して、強光ストレスとホウレンソウ葉緑体チラコイド膜のunstackingの関係を調べる実験を行った。予めチラコイドを低濃度のMgCl_2溶液中でインキュベートしてstackさせ1,000μmol photons m^<-2>s^<-1>の強光を照射すると、チラコイド膜が不可逆的にunstackした。チラコイド膜がunstackする原因を調べるために、酸素発生活性、EPR spin trapping法による活性酸素の検出、D1タンパク質の強光による損傷・分解・架橋の測定を行った。その結果、stackedチラコイド(+MgCl_2条件)ではunstackedチラコイド(-MgCl_2条件)に比べて (1) 強光照射で酸素発生活性が阻害され易い、(2) 強光照射で一重項酸素が発生し易い、(3) 強光照射でD1タンパク質が損傷を受け易く、その結果D1タンパク質の分解とアンテナクロロフィル結合タンパク質CP43やD2タンパク質との架橋反応が起こり易い、などの諸点が明らかとなった。 以上の結果は、強光照射で起こるチラコイドのunstackingが、強光照射下での一重項酸素の発生を抑制し、その結果、光化学系IIの光損傷、特にD1タンパク質の損傷を抑える効果があることを示している。また、チラコイドのunstackingによって、膜上でのタンパク質複合体の移動が容易となり、損傷D1タンパク質を含む光化学系II複合体とD1を分解するFtsHプロテアーゼの反応が容易になる可能性もある。 今回の研究は、in vitroでのunstackingの解析であったが、in vivoで同じ強光照射でチラコイドのunstackingが起きるかどうかを確認する必要がある。そのため、現在、ホウレンソウleaf discを用いた実験系の確立、電子顕微鏡によるチラコイドstacking/unstackingの確認の準備を進めている。これらの研究によって、D1タンパク質の強光による損傷・分解・架橋の過程の背景にある構造的特徴が明確になることが期待される。
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