2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20570043
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
黒田 洋詩 Nagoya City University, 大学院・システム自然科学研究科, 研究員 (80381903)
|
Keywords | 翻訳制御 / 色素体 / 光化学系 |
Research Abstract |
タバコ葉緑体ゲノムには約80種類のタンパク質をコードする遺伝子があり,それらは葉緑体中で発現する.葉緑体遺伝子発現は,光合成などに関与する機能複合体の分子構築に必須の過程であり,光などの周囲の環境に依存した制御を受けることが知られている.しかし,最も重要な過程である翻訳(タンパク質合成)制御のメカニズムについては不明な点が多い.葉緑体翻訳制御では,mRNA上の特別な領域とそこに結合する制御タンパク質(トランス因子)が重要な役割を果たしていると考えらている。その同定を目指して,平成20年度には以下の解析を行った. 1,タバコ葉緑体に由来する無細胞翻訳系を用いて,psbAおよびpsbDについて,mRNA上のどの領域が翻訳開始に最低限必要であるかを詳細に解析した.その結果,両者で全く異なる翻訳制御(制御の有無も含めて)が行われている可能性を示す結果を得た. 2.トランス因子の精製にRNAをリガンドとしたアフィニティー精製法が有効であるかを調べるために, bacL, psbNなどのいくつかの異なるRNAを用いて,それらに結合するタンパク質のアフィニティー精製を行った.その結果,用いたRNAの種類によって,回収されるタンパク質の種類が異なっていた.精製の過程でのそれらの挙動はゲルシフト法などの方法でモニターした結果と一致していた.この結果は,各RNAに特異的に結合するタンパク質の回収がうまく行われていることを示すと考えられ,アフィニティー精製法の有効性が確認できた. 3.葉緑体の遺伝子発現が翻訳の段階でどのように光環境などに制御されているかを調べるために,in vitro翻訳系を用いた解析を行った.その結果,翻訳が反応液のレドックス状態に強く依存することが確認できた.このことは,翻訳に必要なタンパク質の活性が光合成電子伝達反応を介して調節される可能性を示していると思われる.
|