2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20570043
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
黒田 洋詩 名古屋市立大学, 大学院・システム自然科学研究科, 研究員 (80381903)
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Keywords | 翻訳制御 / 色素体 / 光化学系 |
Research Abstract |
葉緑体遺伝子発現は,光合成などに関与する機能複合体の分子構築に必須の過程であり,主に翻訳の段階で,光などの周囲の環境に応答した制御を受けている.そのメカニズムの解明に向け,種々の葉緑体mRNAの翻訳開始機構を解析した. 前年度にrps2 mRNAの翻訳においてS1タンパク質の関与を示唆する結果を得ていたため,その遺伝子をクローニングし,大腸菌で発現・精製を行った.このタンパク質はrps2 5'-UTRと強く相互作用したため,rps2の翻訳開始に関わっていると思われる. タンパク質コード領域が重なりあった二組のmRNAsの翻訳開始機構を解析した.ATP合成酵素のβ,εサブユニットをコードするatpB-atpE mRNAでは,これまでatpEの翻訳がatpBの翻訳に強く依存すると考えられてきたが,実際にはそうでないことを証明した.atpE mRNAの翻訳は自身の翻訳制御領域に強く依存していた.一方,光化学系IIのD2,CP43サブユニットをコードするpsbD-psbC mRNAでは,psbCの翻訳がpsbDの翻訳に強く依存していた.これらの結果は,機能複合体の分子構築とその損傷と修復の過程を理解する上での重要な情報になると思われる. psbD, psbCおよびリボソームS2タンパク質をコードするrps2 mRNAsの翻訳開始効率が,5'-非翻訳領域(5'-UTR)のプロセシングにより大幅に上昇することを明らかにした.rpS2では,プロセシングによる5'-UTRの二次構造の変化が翻訳開始を促進すると考えられる.このことは,RNAプロセシングが翻訳開始複合体の形成において重要な役割を果たすことを示している. 植物に必須のタンパク質分解酵素のサブユニットをコードするClpP1 mRNAの翻訳開始でも5'-UTRの二次構造が大きく影響していた.その変換に関与する因子の同定は今後の課題である.
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