Research Abstract |
本研究では,生物の血球産生(造血)の姿を調べ,造血器官(造血器,造血巣)と血球細胞の機能,形態,特性や,血球産生の分子基盤を明らかし,さらに末梢血球数の維持と調節に関わる未知の制御機構を探索することを目指している。本研究期間では,特に無尾両生類アフリカツメガエル成体の造血巣(主に肝臓)における赤血球系細胞の成熟の過程と,それらの細胞が血液循環に移行するまでの組織空間内の局在と形態の変化を細胞組織化学的に追跡し,赤血球産生制御の特性を明らかにすることを目標としている。 [第1年度]では,ツメガエルの造血解析を実現させる血球関連分子の取得を実施した。この結果,幾つかの重要な分子を同定,クローニング,発現することができた。例えばErythropoietin(EPO)とその受容体の遺伝子配列を明らかにし,大腸菌発現によって遺伝子組換え体を得ることができた(日本血液学会等)。この分子の抗体の調製に着手した。また,EPOは,ほ乳類とは異なり,糖鎖の付加が無いため,その発現臓器である肝臓において赤血球前駆細胞の増殖・分化刺激はパラクラインによるという仮説の下,肝臓における赤血球造血の解析を進めることができた(日本動物学会等)。さらに,低温におけるツメガエル汎血球減少症(特に貧血)は,赤血球産生の低下というよりも,造血器である肝臓から赤血球前駆細胞が血液循環に移行する機構を抑制するためであることが示唆された。この知見は赤血球造血に関する全く新しい現象であり,国際実験血液学会における発表に対して,受賞2件を頂くなどの成果を産むことができた。現在,第二年度に向けて,これらの現象の機序を分子レベル,個体レベルで追跡する実験環境を準備している。
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