Research Abstract |
[第3年度]は,組織微小環境の比較とin vivo赤血球数調節機構の解析を進めた。ツメガエルのErythropoietin (EPO:x1EPO)には,血液循環に必須と考えられてきたN型糖鎖の付加が無い。そのため赤血球産生臓器(肝臓)におけるEPO-EPO受容体(EPOR)傍分泌系の存在が考えられた。一方,哺乳類EPOと,x1EPOのアミノ酸配列一致率は,ヒトEPOとで38%,マウスEPOとで36%と低く,x1EPOがヒトやマウスのEPOのオルソログとは結論しえなかった,そこで両生類で初めてin vitro赤芽球コロニー培養法を確立し,大腸菌発現組換えx1EPOと貧血血液中成分の赤血球前駆細胞増殖分化促進活性を明らかにした。さらに組換えEPO(5μg)を正常成体ツメガエルにin vivo心投与し経過観察したところ,生理活性を示す血中濃度が維持され,肝臓内の赤血球の産生・分化は促進された。しかし末梢成熟赤血球数増多は見られず,逆に減少した。また低温環境暴露ツメガエルでは,汎血球減少に伴う赤血球破壊亢進が見られ,低温下1日目で約30%の循環赤血球数が減少した。この時,肺と肝臓でmRNA発現量はむしろ上昇し,肝臓内の新生赤血球数は増加した。組織精査より,低温下の赤血球数低値維持は新生赤血球が肝臓内に貯留され、循環血に放出されないことが判明した。以上より低酸素刺激により発現亢進するヒトやマウスのEPOとは異なり,ツメガエルは未知のEPO発現制御系をもつ可能性を示す。本年度,x1EPOやx1EPORをそれぞれ認識するモノクローナル抗体の作出に成功し,造血組織の免疫化学的検索や,抗体のin vivo投与などの検討に着手した。赤血球造血以外にも,栓球造血,白血球造血の解析が進んでおり,血液幹細胞から特定の血球を生み出す制御系の探索も現実に視野内に入ってきた。
|