2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20570067
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
秋野 順治 Kyoto Institute of Technology, 工芸科学研究科, 准教授 (40414875)
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Keywords | 社会寄生 / 化学擬態 / 奴隷狩り |
Research Abstract |
平成20年度に検証した「社会寄生性アリのサムライアリとその宿主のクロヤマアリが互いの識別状況」に関する行動的側面に加えて、今年度は寄生が成立している巣内および非寄生の巣における巣仲間認識フェロモンについてその組成比の類似性・相違性に関して、機器分析を駆使することで検証をおこなった。その結果、寄生巣内における奴隷クロヤマアリの体表炭化水素組成比のばらつき度合いは、非寄生巣内におけるクロヤマアリのものと明瞭に異なることが明らかになった。一方、寄生者であるサムライアリについては、宿主クロヤマアリと同一の組成成分を保有していること、隔離飼育するとその組成に変化が生じること、組成比については宿主クロヤマアリとは異なる傾向を示すこと、などを明らかにした。これらの結果を、サムライアリが奴隷として宿主クロヤマアリを蛹ないし幼虫の時期に拉致するという生態的特長、およびクロヤマアリの巣仲間識別能は羽化後に形成される(仮説)ことと考え合わせると、次の仮説が立てられる:サムライアリは、クロヤマアリの巣仲間識別能形成を操作することで、血縁の異なる奴隷クロヤマアリを内包しながら一つの複合社会として自巣を統制している。この仮説を検証するため、クロヤマアリにおける巣仲間認識能の獲得過程と時期について研究を行なう予定である。加えて、21年度にはクロクサアリとアメイロケアリの混成巣における両者の巣仲間識別行動および巣仲間認識シグナルの比較・分析も実施した。双方向に巣仲間識別は成立しており、その認識シグナルの統制も巣内では図られていることを明らかにした。このことからクロクサアリは、サムライアリにおける情報統制システムとは異なる機構を持つことが示唆される。この可能性を検証するため、22年度は複数巣間での比較分析を行う予定である。
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