2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20570067
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
秋野 順治 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (40414875)
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Keywords | 社会寄生 / 化学擬態 / 奴隷狩り |
Research Abstract |
平成21年度までの成果に基づいて立てた仮説「サムライアリは、宿主クロヤマアリの巣仲間識別能形成を操作することで、血縁の異なる奴隷クロヤマアリを内包しながら一つの複合社会として自巣を統制している」を検証するために、平成22年度はクロヤマアリの巣仲間認識能の獲得時期を探った。クロヤマアリの幼虫・蛹は異巣の成虫によっても受容されることから、羽化後の成虫期間の初期に同能力を獲得することが予期される。その過程において、(A)新羽化個体自身がアイデンティティを確立する時期と、(B)周囲の成虫が新羽化個体を巣仲間(成虫)として識別する時期とは互いに同調している可能性が高い。しかし、実験においてはA・Bを別途に検証する必要がある。予備実験から、従来の対面式生物検定法では、活動性が比較的低い新羽化個体による成虫個体の認識を判定しようとする場合、行動による評価が困難であることが判明した。そこで今年度の具体的目標として、(1)成虫による新羽化個体への反応を検証することに重点を置くとともに、(2)活動性の低い新羽化個体に対しても巣仲間認識能力を判定できる生物検定法の構築をこころみた。(1)については、羽化後まもない羽化成虫に対しては殆ど見られない攻撃・警戒的行動が、羽化後7日から10目経過すると観察されるようになることが判明した。また、それと同調して新羽化個体の体表炭化水素組成に変化が見られることも明らかになった。(2)については、新羽化個体を安定的に固定して触角や大顎の動きを観察することで、同巣・異巣個体への反応を評価することが可能になった。この検定法を用いることで、新羽化個体のアイデンティティ確立時期を検証することができる。今後、先のA・Bの時期の確定、およびサムライアリによる奴隷狩りの時期との照合せることで、冒頭の仮説検証を可能にする手がかりが得られると考えている。
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