2008 Fiscal Year Annual Research Report
クマネズミ属およびハツカネズミ属の分子系統学的解析と多様性科学研究への活用
Project/Area Number |
20570078
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 仁 Hokkaido University, 大学院・地球環境科学研究院, 准教授 (40179239)
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Keywords | クマネズミ / ハツカネズミ / 遺伝子進化 / 自然選択 / 人為的移入 / 適応放散 / モデル生物 / 遺伝的多様性 |
Research Abstract |
アジア産クマネズミの毛色関連遺伝子の一つMclr遺伝子の地理的変異を解析した。その結果、これまでのクマネズミは「アジア型」と「オセアニア型」という二つの地理的グループが存在するとの認識とは異なり、これに加え、東南アジアに「ラオス型」、「ジャワ型」を始めとする古い時代に分岐した4つの系統がみつかり計6つの系統群として認識できることが明らかとなった。興味深いことに日本にはオセアニア型の存在が認められ、黒色個体も捕獲されているが、Mclr遺伝子のオセアニア型アレルにおいて94番目アミノ酸がグルタミン酸からリジンへの置換が起きていることが明らかとなった。 ユーラシア産ハツカネズミのミトコンドリア多型を調べたところ、日本産ハツカネズミの一つのアレルグループは韓国産と高い類縁性を示した。もう一つのアレルグループはインド、南中国、東南アジアに広く分布し、急速な広域拡散によって北海道にまで到達したことが示唆された。核遺伝子のハプロタイプを解析したところ、東北以北には列島に特異的な組換体が存在し、数十kbごとに一つという比較的密度の高い組換体であったので有史以前といった古い時代に複数の異なる地域からの系統移入が列島にあったことが示唆された。Mclr遺伝子のアミノ酸レベルの変化率(dN/dS比)をハツカネズミ属の15種で調べたところ、ハツカネズミ亜属の祖先系統で有意に高くなっていることが示された。ニッチのシフトにより誘起された可能性もあり、淘汰圧の緩和か急激な環境変動への適応の結果であるのかは今後の課題である。
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Research Products
(4 results)