Research Abstract |
キイロショウジョウバエが含まれるシマショウジョウバエ亜属(Sophophaora)を中心とした分類群の系統関係を明らかにするために,特に, 旧世界(アジア〜ヨーロッパ)特産のニセヒメショウジョウバエ属(Lordiphosa)と新熱帯特産のDrosophila saltans種群, D. saltans種群の関係に着目し, ミトコンドリア遺伝子(ND2, COII)および核遺伝子(Adh, 28SrRNA)による分子系統解析を行った. 解析法は, 将来, 多数の遺伝子の配列データを使った, 新しい系統解析法を開発するための基礎となる試みとして, 4つの遺伝子の配列を1本に繋げて解析(スーパーマトリックス法)するのではなく, 遺伝子ごとに異なる進化パターンを考慮する方法を近隣結合法(NJ法)に導入して, 系統樹の推定を行い, 他の方法との比較を行った. その結果, ニセヒメショウジョウバエ属はD. saltans種群+D. saltans種群と単系統群を形成し,シマショウジョウバエ亜属は側系統群であることを明らかにした. 次年度以降, 研究対象分類群を, ショウジョウバエ亜科全体に広げるために, 中国において, DNA分析用の新鮮な標本を得るための野外採集を行った. 研究分担者(戸田)の提案がきっかけとなって実現した, 世界のショウジョウバエ分類学者, 分子系統学者が一堂に会したシンポジウム(Drosophila Taxonomy, Systematics and Phylogenetics and their implications for Drosophila biology, November 22 and 23, San Diego)において, ショウジョウバエ亜科全体の系統解析と分類体系改訂に関して, 世界の研究者の協力関係を構築するとともに, 東洋区のショウジョウバエ類の重要性を指摘した.
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