2010 Fiscal Year Annual Research Report
パラオ諸島固有のカタツムリの適応放散と多様性保全についての研究
Project/Area Number |
20570085
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上島 励 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (20241771)
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Keywords | 陸産貝類 / 種分化 / 保全 |
Research Abstract |
2003年5月から2011年3月にかけてパラオ諸島に生息する陸産貝類の調査を実施し、パラオの全域を網羅する141地点で陸貝を採集した。その結果、パラオ諸島から21科166種の陸貝を確認した。これらの内、移入種は5種、他の近隣地域にも生息する広域分布種は7種、未同定種が5種、残りの149種が固有種で、パラオ産陸貝相全体の固有種率は89.7%にも達する。固有種の内の少なくとも91種が未記載種であったが、未記載種が近年の調査でも発見され続けていることを考慮すると、実際の固有率はさらに高いと予想される。 固有種の中では、ゴマガイ科、カサマイマイ科、ベッコウマイマイ科、ヘソカドガイ科、エンザガイ科等で著しい種分化が起きており、前3科では適応放散が生じていると考えられた。またエンザガイ科やポリネシアマイマイ科のように他の地域ではほぼ絶滅したと考えられるグループが現在でも生息しているのは特筆すべきことである。 一方、過去の報告と今回の調査結果を比較したところ、4種の陸貝は絶滅した可能性が高いと考えられた。また、Pelelliu島では太平洋戦争以前に生息が確認された3種が発見されず、同島の地域個体群が絶滅したと思われる。かつて太平洋諸島には多くの固有陸産貝類が生息していたが、自然環境の破壊や移入種の導入により多くの種が絶滅したことが知られている。パラオ諸島でも固有種の絶滅が起きてはいるものの、多様な固有陸産貝類相が現在でも維持されている唯一の地域であり、緊急な保全対策が必要である。
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Research Products
(8 results)