2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20570093
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
日高 道雄 琉球大学, 理学部, 教授 (00128498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
波利井 佐紀 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (30334535)
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Keywords | サンゴ / 生活史 / 群体 / 老化 / テロメア / 寿命 / ポリプ / 共生 |
Research Abstract |
本研究では、花虫綱のイシサンゴ類と鉢虫綱のサカサクラゲを材料とし、刺胞動物の顕著な再生能力や際限の無い無性生殖を可能にするメカニズム、有性生殖と老化や寿命との関係など、刺胞動物の生活史特性を分子生物学的手法を用いて解明することを目的とした。 (1)サンゴやサカサクラゲなどゲノム情報のない非モデル生物において、テロメアの隣接配列を決定し、テロメア2本鎖部をPCR増幅することにより、特定染色体のテロメア長を測定する方法を開発した。ヒトで開発されたSTELA法を、非モデル生物へ応用した初めての例である。PCR産物(STELA産物)の長さを決定する際には、テロメアプローブを用いたサザンハイブリダイゼーションを行うことが必要であった。非特異増幅を起こさないようなプライマーの設計、テロメアを無傷のままDNAを抽出する方法、in situ hybridizationによる今回テロメア長を測定した特定染色体の同定など、課題点も明らかになった。 (2)単体性サンゴであるトゲクサビライシに加えて、群体性サンゴであるアザミサンゴにおいても、テロメア長を測定することに成功した。アザミサンゴでは、単体サンゴのトゲクサビライシと異なり、プラヌラ幼生と精子間でテロメア長に差が見られず、初期発生過程でテロメラーゼ活性が発現している可能性が示唆された。組織内の生殖幹細胞や体細胞性幹細胞の分布密度により、組織のテロメア長の差が生じる可能性もあり、今後、これら幹細胞の分布密度を解析することが必要であり、現在そのための分子マーカーを開発中である。 (3)サンゴの生存に重要な生活史初期におけるサンゴー褐虫藻共生成立について、野外実験により明らかにした。その結果、サンゴ幼生は浮遊期間中に褐虫藻を獲得可能であること、また、成体サンゴとは異なり、幼生や初期ポリプは様々な遺伝子型の褐虫藻を選択せずに獲得することが明らかとなった。このことは、サンゴが生活史初期において海洋環境中で利用できる褐虫藻と先ず共生を成立させ、当面必要なエネルギーを得て生存率を高めている可能性を示唆する。
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Research Products
(7 results)